薬剤師による外来がん患者への診察前関与、医師の92%が有用と回答
中央社会保険医療協議会は10月18日、第559回総会を開き、がん・疾病対策について議論した。そのうち、外来腫瘍化学療法においては、医師の診察前に病院薬剤師が、がん患者の服薬状況等の情報収集と情報提供を行うことが、医師の大幅な負担軽減につながっているとの調査結果が示された。
「外来腫瘍化学療法診療料1、2」は、2022年度診療報酬改定時に、これまでの外来化学療法加算と別に、抗がん剤投与患者を対象に新設された診療報酬項目。施設基準は、専任の医師、看護師、または薬剤師が院内に24時間1人以上配置され、患者からの電話等による緊急の相談等に24時間対応できる連絡体制の整備していること。また算定要件としては、患者の同意を得た上で、化学療法の経験を有する医師、化学療法に従事した経験を有する専任の看護師及び化学療法に係る調剤の経験を有する専任の薬剤師が、必要に応じてその他の職種と共同して、注射による外来化学療法の実施その他の必要な治療管理を行うこととなっている。
薬剤師と医師の協働で副作用が減少する傾向に
今回の調査では、外来腫瘍化学療法診療料1を届出している医療機関401施設のうち、薬剤師が診療前の情報収集と医師への情報提供を行っている割合が57%と判明。薬剤師が服薬状況や副作用の発現状況等について、薬学的な観点から医師の診察前に確認を行い、医師に情報提供や処方提案等を行うことで、医師に処方修正等の追加の業務を発生させることなく当日の処方や指示に反映でき、円滑に外来腫瘍化学療法が実施できていることが分かった。
好事例としては、直腸がんで分子標的薬を含むがん化学療法中の患者に、副作用の皮膚症状にステロイド外用剤で対処していたが、副作用の悪化により疼痛が出現していることを薬剤師が聴取。医師と相談し分子標的薬の減量調節をすることとなった――などのケースが紹介された。
また今回、厚生労働省が示した2023年度版の医師調査によると、診察前に薬剤師が関与して得た患者情報や治療の提案については、がん診療連携拠点病院等の医師の92%が「診察する上で有用な情報」と回答し、高く評価していることが判明。次いで「薬物治療の効果や安全性の向上に繋がっている」との回答が78%、「外来診察時間の短縮につながっている」との回答が67%となり、薬剤師の診察前の関与が医師のタスク・シフト/シェアとして奏功していることも示された(診察前の薬剤師関与を実施している施設、n=135)。
なお、今回の調査によって、薬剤師が医師と協働することで、外来腫瘍化学療法における副作用に対する支持療法等での副作用が減少する傾向が認められたことも分かった。また、吐き気・嘔吐、末梢神経障害、疼痛に関連したQOL評価尺度は有意に改善したことも報告された。(HealthDay News 2023年11月1日)
参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00218.html
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