副作用 |
経過 |
対応 |
鎮静 |
開始後数ヵ月間に生じる。 持続することもあるが、通常はある程度軽減する |
朝の用量を少なくする。朝の目覚めに問題がある場合は、晩の服用時間を早くする。 可能であればクロザピンを減量する。 |
流涎過多 |
開始後数ヵ月間に生じる。 通常は持続するが、軽減することもある しばしば夜間に問題となる |
日中にチューインガムを噛む、枕を高くする、枕の上にタオルを敷いて衣類が濡れるのを防ぐ等の非薬物療法的な治療を使用してもよい。(本文P.202より) 注:抗コリン薬は便秘と認知機能を悪化させる |
便秘 |
最もリスクが高いのは開始後4カ月である。通常は持続するため、継続的なモニタリング治療が必要である。 |
クロザピン開始前にリスクについて説明し、定期的にスクリーニングを行い、食物繊維や水分を十分に摂っているか、十分な運動を行なっているかを確認する。刺激性緩下剤(センナ)が第一選択であり、必要に応じて便軟化剤および/または浸透圧性下剤(マクロゴール)を追加する。根本原因は胃運動低下であるため、膨張性緩下剤は通常は避けるべきである。他に便秘の誘因となりうる薬剤を中止し、可能であればクロザピンを減量する。便秘から死に至ることもあるので、効果的な治療または予防が必須である。 |
低血圧 |
開始後4週間に生じる |
立ち上がる時は時間をかけるように助言する。クロザピンを減量するか増量ペースを落とす。水分摂取量を1日2Lに増加させる。 長期的には体重増加から高血圧に至る可能性がある |
高血圧 |
開始後4週間に生じるが、長引く場合もある |
慎重にモニタリングし、必要であれば増量のペースを落とす 降圧療法が必要になることもある |
頻脈 |
開始後4週間に生じるが、持続することもある |
治療開始後によくみられる症状で、通常は良性である。用量に関連することもある。安静時にも持続したり、発熱、低血圧、胸痛を伴う場合は心筋炎が疑われる。循環器病専門医に相談すべきである。胸痛や心不全に随伴して頻脈が起こるようであればクロザピンは中止する。 頻脈が長引くと、それ自体が心筋症やその他の心血管系合併症を促進する可能性があるので要注意である。 |
体重増加 |
通常は開始後1年間に起こるが、持続することもある |
食事指導は必須である。体重が増加し始める前に指導すると効果が高いかもしれない。 体重増加はよくみられる副作用であり、著明なことも多い(開始後10週間で4.5kgの増加)。 |
発熱 |
開始後4週間に生じる |
クロザピンは炎症反応(C反応性蛋白やインターロイキン6、好酸球の増加)を誘発する。好中球減少についてFBCをチェックすること。増量ペースを下げる。血液障害に関連する発熱は少ないが、心筋炎および神経遮断薬悪性症候群(NMS)、肺炎やその他の比較的稀なタイプの炎症性臓器障害には注意する。 |
けいれん発作 |
いつでも起こる可能性がある |
用量、血漿中濃度、増量のペースが速いことに関連する。けいれん発作が起きた場合はクロザピンを1日中止し、用量を半分にして再開し、抗てんかん薬を投与する。クロザピン投与中はEEG異常がよくみられる |
悪心 |
開始後6週間に起こる |
制吐剤を処方してもよい。EPSの既往がある場合は、プロクロルペラジンやメトクロプラミドは避ける。心疾患リスクやQTc延長がある場合には、ドンペリドンは避ける。オンダンセトロンは適切な選択肢であるが、便秘を悪化させる可能性がある。心筋炎の症状として悪心と嘔吐のみが現れた1症例が報告されている。 |
夜尿 |
いつでも起こる可能性がある |
減量するか、投与スケジュールを調節して時間帯により深い鎮静がかかることを避ける。就寝前の水分摂取を避ける。夜間の予定排尿を検討する。自然軽快することもあるが、月、年単位で持続することもある。クロザピン服用患者5例に1例の割合で起こる可能性がある。クロザピン服用患者5例に1例の割合で起こる可能性がある。重症の場合は、通常デスモプレッシン点鼻薬(10-20μg就寝前投与)が有効であるが、リスクがないわけではなく、低ナトリウム血症が生じる可能性がある。抗コリン薬は有効かもしれないが、支持するエビデンスは弱く、便秘や鎮静が悪化する可能性がある |
胃食道逆流症(GERD) |
いつでも起こる |
プロトンポンプ阻害薬がしばしば処方されるが、CYP1A2を誘導するものもあり、好中球減少症および無顆粒球症のリスクを増加させる可能性がある。 クロザピンはH2受容体拮抗薬であり、GERDと関連する理由は不明である |
ミオクローヌス |
増量中または血漿中濃度の増加中 |
この後に、全般性強直間代発作が起こることがある。用量を減量する。抗てんかん薬は有効かもしれず、けいれん発作への進行の可能性を軽減する。バルプロ酸が第一選択薬である。ラモトリギンはある種のミオクローヌスを悪化させる可能性がある。 |
肺炎 |
通常は開始後初期であるが、いつでも起こる可能性がある |
唾液の誤嚥から起こる可能性がある(これが、肺炎が時に用量依存的に生じる理由である可能性がある)。非常にまれではあるが、便秘も誘引となる。肺炎はクロザピン投与を受けている患者の間ではよくみられる死因である。クロザピン投与中は一般的に感染症の発生率が高いと考えられ、抗生物質の使用が増える。呼吸器感染症によりクロザピン濃度が上昇する可能性があることに注意する(感染中は喫煙しないことが多いため、濃度上昇はこの交絡因子が原因であると考えられるが、炎症によるCYP1A2活性の低下が原因である可能性もある)。クロザピンは肺炎が軽快したら問題なく投与を継続できることが多いが、再発の可能性も高い。 |