国内臨床試験
Clozapine(LX100-129)の治療抵抗性統合失調症患者に対する継続投与試験(長期投与試験:1202試験)3)
目的
治療抵抗性統合失調症患者に対するクロザリルの長期投与における安全性、有効性を検討する。
対象
先行して行われた後期第Ⅱ相試験:1201試験に参加し、本剤の有効性が認められた治療抵抗性統合失調症患者19例(解析対象除外例1例を含む)
症例(評価例)数
19例(解析対象除外例1例を含む)
試験デザイン及び投与方法
試験デザイン:
多施設共同、非対照、非盲検、長期投与試験
投与方法:
先行して行われた後期第Ⅱ相臨床試験完了時の用法・用量を継続した。投与中は臨床効果及び耐容性を考慮して、医師の判断により適宜増減した。増量については、以下の1~4の留意事項に従い行うこととした。
- 増量間隔は少なくとも4日間以上とする。
- 1日で100mgを超える増量は行わない。
- 投与量が200mg/日以上の場合には分割投与とする。
300mg/日以上である場合には3分割以上の投与が望ましい。また、総1日量は、均等に分けずに、就寝時に多く投与してもよい。
- 1日最高投与量は600mgを目安とする。
精神症状の悪化のため、やむをえない場合は1日投与量600mgを超えての増量も可とする。ただし、1日投与量900mgを超えてはならない(治験途中で1日投与量の上限が600mgに変更された)。
投与終了・中止時:
無顆粒球症・好中球減少症、心筋炎・心筋症などの重篤な有害事象発現のため治験薬の投与を緊急に中止しなくてはいけない場合は、精神症状の再燃など十分に注意した。また、緊急を要さない場合は、2週間以上かけ精神症状の変化に注意しながら漸減終了した。
投与期間:
最長5年間(2006年12月31日のデータカットオフ時点)
国内で承認されたクロザリルの用法及び用量
通常、成人にはクロザピンとして初日は12.5mg(25mg錠の半分)、2日目は25mgを1日1回経口投与する。
3日目以降は症状に応じて1日25mgずつ増量し、原則3週間かけて1日200mgまで増量するが、1日量が50mgを超える場合には2~3回に分けて経口投与する。維持量は1日200~400mgを2~3回に分けて経口投与することとし、症状に応じて適宜増減する。ただし、1回の増量は4日以上の間隔をあけ、増量幅としては1日100mgを超えないこととし、最高用量は1日600mgまでとする。
評価項目
主要評価項目:
安全性
有害事象、体重、体温、血圧・脈拍数、血液学的一般検査、HbA1c、グルコース、血液生化学検査、尿検査、内分泌検査、心電図、心エコー
副次評価項目:
有効性
- BPRS合計スコア変化量とクロザリル1日投与量の推移
以下の18項目*からなり、評価は「1.なし」、「2.ごく軽度」、「3.軽度」、「4.中等度」、「5.やや重度」、「6.重度」、及び「7.最重度」の7段階で行った。
*心気症、不安、情動的引きこもり、概念の統合障害、罪責感、緊張、衒奇症と不自然な姿勢、誇大性、抑うつ気分、敵意、猜疑心、幻覚による行動、運動減退、非協調性、不自然な思考内容、情動の平板化、興奮、見当識障害
- PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale )
以下の30項目*からなり、評価は「1.なし」、「2.ごく軽度」、「3.軽度」、「4.中等度」、「5.やや重度」、「6.重度」、「7.最重度」で行った。
*〔陽性尺度〕
妄想、概念の統合障害、幻覚による行動、興奮、誇大性、猜疑心、敵意
〔陰性尺度〕
情動の平板化、情動的引きこもり、疎通性の障害、受動性/意欲低下による社会的引きこもり、抽象的思考の困難、会話の自発性と流暢さの欠如、常同的思考
〔総合精神病理評価尺度〕
心気症、不安、罪責感、緊張、衒奇症と不自然な姿勢、抑うつ、運動減退、非協調性、不自然な思考内容、失見当識、注意の障害、判断力と病識の欠如、意志の障害、衝動性の調節障害、没入性、自主的な社会回避
- 遅発性ジスキネジア・錐体外路症状(DIEPSS: Drug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale、AIMS: Abnormal Involuntary Movement Scale )
解析計画
BPRS、PANSS、DIEPSS及びAIMSの元データ尺度、投与開始日からの変化量について記述統計量の算出及び平均の推移図を作成した。計数値については、各カテゴリーの度数及び割合を算出した。
判定基準
BPRS合計スコア改善例とは、投与前のBPRS合計スコアを基準として各評価時点でスコアが20%以上低下した患者と規定した。
安全性
主要評価項目:副作用*
副作用は18例中18例すべてに発現しました。特に発現率が高かった副作用は、白血球数増加14例(77.8%)で、以下、傾眠13例(72.2%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加12例(66.7%)、流涎過多10例(55.6%)の順でした。
重篤な副作用として、麻痺性イレウス1件、痙攣1件、子宮内膜増殖症1件が認められました。また、本試験において死亡例は認められませんでした。投与中止にいたった副作用として、白血球減少症1件、好中球減少症1件が認められました。
*クロザリルとの関連が疑われる有害事象
有効性
副次評価項目:BPRS合計スコア変化量とクロザリル1日投与量の推移
BPRS合計スコアの変化量(平均値±標準偏差)及び改善率*は1201試験終了時(投与26週後)でそれぞれ−17.5±10.33及び70.6%(12/17例)、投与210週後でそれぞれ−22.0±10.41及び84.6%(11/13例)であり、投与約4年後までほぼ一定に推移しました。
また、同時期のクロザリルの平均1日投与量は、投与26週後で350.6±114.68mg/日、投与210週後で365.4±129.72mg/日で、平均投与量に変化は認められませんでした。
*改善例:BPRS合計スコアが20%以上低下した患者
主要文献
3)社内資料: Clozapine(LX100-129)の治療抵抗性統合失調症患者に対する継続投与試験(CLEX123J1202)[承認時評価資料(長期投与試験)]