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アフィニトール

結節性硬化症(TSC)

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

結節性硬化症又は孤発性リンパ脈管筋腫症に伴う腎血管筋脂肪腫対象第Ⅲ相国際共同比較検証試験(EXIST-2 試験)、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫対象第Ⅲ相海外比較検証試験(EXIST-1試験)、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫対象第Ⅱ相海外臨床試験(C2485試験)に加え、結節性硬化症に伴うてんかん部分発作対象第Ⅲ相国際共同比較検証試験(EXIST-3試験)、及び結節性硬化症に伴うリンパ脈管筋腫症又は孤発性リンパ脈管筋腫症対象第Ⅱa 相海外臨床試験(X2201試験)の結果に基づき、本剤の効能又は効果を「結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫」及び「結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫」から「結節性硬化症」に一部変更することが承認されました。なお、EXIST-1 試験、EXIST-3 試験、X2201試験は承認用法用量ではなく、また、EXIST-2試験及びX2201 試験は承認外の孤発性リンパ脈管筋腫症患者を含む臨床試験です。

結節性硬化症又は孤発性リンパ脈管筋腫症に伴う腎血管筋脂肪腫対象第Ⅲ相国際共同比較検証試験(EXIST-2 試験)1)2)

1)社内資料:国際共同臨床試験の結果 M2302 試験(承認時評価資料)〔20190281〕

2)Bissler, J. J. et al. : Lancet 381(9869), 817, 2013〔 CERF00079〕

COI:本研究はノバルティスがスポンサーとなり実施しました。ノバルティス社員が著者に5 名含まれています。ノバルティスより謝礼金、コンサルタント料、研究助成を受領している著者が含まれています。

試験方法

試験デザイン: 多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、並行群間比較試験
実施地域:日本、米国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ロシア、ポーランド、スペイン、イギリスの世界11ヵ国

結節性硬化症又は孤発性リンパ脈管筋腫症に伴う腎血管筋脂肪腫対象第Ⅲ相国際共同比較検証試験(EXIST-2 試験)
目的 腎血管筋脂肪腫(腎AML)に対するアフィニトールの奏効率をプラセボと比較検証する。
対象 18 歳以上の結節性硬化症又は孤発性リンパ脈管筋腫症(LAM)に伴う腎AML 患者118 例
方法 対象をアフィニトール群とプラセボ群に2:1の割合でランダムに割り付けし、各々にアフィニトール10mg 又はプラセボを1日1 回食後すぐに連日経口投与し、腎AML の進行、死亡又はその他の理由で試験を中止するまでのいずれか最も早い時点まで継続した。
評価項目 主要評価項目: 腎AML に対する奏効率(中央画像判定)
副次評価項目: 腎AML 進行までの期間、腎AML 奏効までの期間、皮膚病変に対する奏効率、安全性 等
探索的評価項目: LAM に対する効果(肺機能;一秒量(FEV1)、努力肺活量(FVC)、肺の一酸化炭素拡散能力(DLCO)のベースラインからの変化)
解析計画 腎AML に対する奏効率及び皮膚病変に対する奏効率(完全奏効又は部分奏効)は、修正層別因子(EIAED 使用の有無)により層別化したCochran-Mantel-Haenszel(CMH)の片側正確検定により各群間を比較し、95%信頼区間とともに算出した。主要評価項目の補助的解析として両側腎における標的腎AML 病変の体積和、標的腎AML 病変の体積和のベースラインからの変化を投与群及び評価時点ごとに要約した。また、Waterfall plotを用いて、投与群別のベースラインからの標的腎AML 病変の体積和の最良変化率を示した。腎AML 進行までの期間はKaplan-Meier 法を用いて推定し、修正層別因子により層別化した片側ログランク検定を用いて各群間を比較した。いずれの評価項目も片側有意水準2.5%とした。腎AML 奏効までの期間はアフィニトール群のみで評価し、Kaplan-Meier 法を用いて推定した。LAM に対する効果は、LAM患者の肺機能(FEV1、FVC、DLCO)のベースラインからの変化を投与群及び評価時点ごとに要約した。

【 参考 】 腎AML に対する奏効及び進行の定義

患者背景(海外データ)

患者背景ごとのアフィニトール群とプラセボ群の表

* 皮質結節と放射状大脳白質神経細胞移動線を同時に認める場合は主要特性1つと考える。LAMと腎AMLを同時に認める場合は結節性硬化症と診断するには他の特性を認める必要がある。

(コア期終了時解析:2011年6月カットオフ、最大の解析対象集団)

腎AMLの特性

腎AMLの特性ごとのアフィニトール群とプラセボ群の表

腎AMLに対する前治療

腎AMLに対する前治療ごとのアフィニトール群とプラセボ群の表

有効性

1)腎AML に対する奏効率(主要評価項目)

コア期終了時解析(2011 年6月カットオフ)

腎AML の最良総合効果を検討したところ、奏効が確認された症例は、アフィニトール群で33 例(41.8%)、プラセボ群で0 例(0%)であり、奏効率はアフィニトール群とプラセボ群の間に有意な差があることが検証されました(修正層別因子(EIAED 使用の有無)を用いたCochran-Mantel-Haenszel の片側正確検定)。また、標的腎AML 病変の体積和がベースラインより減少した被験者の割合は、プラセボ群で59.4%に対し、アフィニトール群では95.5%でした(主要評価項目の補助的解析)。

中央画像判定に基づく腎AMLの最良総合効果(海外データ)

中央画像判定に基づく腎AMLの最良総合効果(海外データ)表

*修正層別因子(EIAED 使用の有無)を用いたCochran-Mantel-Haenszel の片側正確検定

継続期終了時解析(2015年2月カットオフ)

アフィニトールが投与された112例において、奏効が確認された症例は65例(58.0%)[95%信頼区間;48.3 -67.3]でした。また、標的腎AML 病変の体積和がベースライン(アフィニトール投与開始前;プラセボ群の場合はアフィニトール投与への切替え時)より減少した症例は98例(97.0%)でした(主要評価項目の補助的解析)。

中央画像判定に基づく腎AMLの最良総合効果(海外データ)

中央画像判定に基づく腎AMLの最良総合効果(海外データ)表

中央画像判定に基づく標的腎AML病変の体積和の最良変化率

中央画像判定に基づく標的腎AML病変の体積和の最良変化率(海外データ)のグラフ
2)腎AML 進行までの期間(副次評価項目)

コア期終了時解析(2011年6月カットオフ)

アフィニトール群3 例(3.8%)、プラセボ群8 例(20.5%)に腎AML 進行が認められました。腎AML 進行までの期間は、プラセボ群で中央値11.4ヵ月、アフィニトール群では中央値に到達せず、腎AML 進行までの期間延長においてアフィニトール群とプラセボ群の間で有意な差があることが認められました(ハザード比:0.08、95%信頼区間:0.02 - 0.37、層別片側ログランク検定p <0.0001)。

継続期終了時解析(2015年2月カットオフ)

アフィニトールが投与された112例において、16例(14.3%)に腎AML 進行が認められました。腎AML 進行までの期間の中央値は、打ち切り例が多く推定されませんでした。なお、推定無増悪生存率は、6、12、24、36、48ヵ月時点でそれぞれ98.0%(95%信頼区間:92.2 - 99.5)、96.0%(95%信頼区間:89.6 - 98.5)、91.6%(95%信頼区間:84.0 - 95.7)、84.5%(95%信頼区間:75.1 - 90.5)、83.1%(95%信頼区間:73.4 - 89.5)でした。

中央画像判定に基づく腎AMLの進行までの期間のKaplan-Meier曲線

中央画像判定に基づく腎AMLの進行までの期間のKaplan-Meier曲線(海外データ)の表
3)腎AML 奏効までの期間(副次評価項目)

コア期終了時解析(2011年6月カットオフ)

腎AML 奏効までの期間は、アフィニトール群のみで評価しました。コア期終了時解析のデータカットオフ時点で奏効が認められた33例において、腎AML 奏効までの期間中央値は2.86ヵ月(95%信頼区間:2.79 - 3.02)でした。

継続期終了時解析(2015年2月カットオフ)

継続期終了時解析のデータカットオフ時点で奏効が認められた65例において、奏効までの期間中央値は2.89ヵ月(95%信頼区間:2.79 - 3.19)、奏効までの期間の範囲は78日(約2.6ヵ月)〜1030日(約33.8ヵ月)でした。

4)皮膚病変に対する影響(副次評価項目)

コア期終了時解析(2011年6月カットオフ)

ベースライン時に1つ以上の皮膚病変を有した114例(アフィニトール群77例、プラセボ群37例)において、皮膚病変に対する完全奏効又は部分奏効は、アフィニトール群で20 例(26.0%)(95%信頼区間:16.6 -37.2)、プラセボ群で0 例(95%信頼区間:0 – 9.5)でした(Cochran-Mantel-Haenszel の片側正確検定p=0.0002)。

継続期終了時解析(2015年2月カットオフ)

アフィニトール投与開始前(プラセボ群の場合はアフィニトール投与への切替え時)に1つ以上の皮膚病変を有した107例において、皮膚病変に対する完全奏効又は部分奏効は68.2%(95%信頼区間:58.5 -76.9)で、完全奏効が1 例(0.9%)、部分奏効が72 例(67.3%)に認められました。

皮膚病変に対する「奏効」の定義

5)LAM に対する影響(探索的評価項目)

コア期終了時解析(2011年6月カットオフ)

ベースライン時にLAM 病変が認められた34例(孤発性リンパ脈管筋腫症5例を含む)において、24週時点での肺機能のベースラインからの変化率中央値は、FEV1がアフィニトール群−1.43%、プラセボ群−3.70%、DLCO がそれぞれ−2.73%及び−7.57%でした。FVC は両群で同様でした。

継続期終了時解析(2015年2月カットオフ)

アフィニトール投与開始前(プラセボ群の場合はアフィニトール投与への切替え時)のベースライン時にLAM 病変が認められた症例は29 例で、肺機能のベースラインからの変化率中央値は、FEV1が24 週時点で-3.45%(23 例)、96 週時点で−5.88%(22 例)、192 週時点で−9.00%(18 例)、DLCO がそれぞれ-2.69%、−10.19%、−10.62%、FVC がそれぞれ0%、−1.25%、−4.29%でした。

安全性(副次評価項目)

<コア期終了時解析>
・ 主な副作用

アフィニトール群79例中、副作用は76例(96.2%)にみられました。主な副作用は、口内炎(口腔内潰瘍等を含む)59例(74.7%)、感染症33例(41.8%)、高コレステロール血症18例(22.8%)等でした。また、プラセボ群39 例中、副作用は25 例(64.1%)にみられました。比較的頻度が高かった副作用は好中球減少症4例(10.3%)でした。
・ 重篤な有害事象
重篤な副作用の発現割合は、アフィニトール群で6例(7.6%)、プラセボ群で2例(5.1%)でした。アフィニトール群の内訳は、グレード2の急性腎不全、消化管感染及び肺炎が1例、グレード2の関節滲出液及び複合性局所疼痛症候群が1例、グレード3の胆管狭窄が1例、グレード3の過敏症、血管浮腫及び気管支痙攣が1 例、グレード3の疲労及び食欲減退が1 例、グレード3の盲腸炎が1 例でした。プラセボ群の内訳は、扁桃炎が1例、幻覚が1例でした。
・ 投与中止に至った有害事象
投与中止に至った有害事象の発現割合は、アフィニトール群で3例(3.8%)、プラセボ群で4例(10.3%)でした。アフィニトール群の内訳はグレード2の血中リン減少が1 例、グレード4の痙攣が1 例、グレード3の過敏症、血管浮腫、及び気管支痙攣が1例でした。痙攣を除き、すべての事象でアフィニトールとの関連が否定されませんでした。プラセボ群の内訳はグレード2の幻覚、血管筋脂肪腫、及びリンパ管平滑筋腫症が1例、グレード4の腸の軸捻転が1例でした。
・ 死亡
試験期間中にアフィニトール群の1例がてんかん重積発作で死亡しましたが、アフィニトールとの関連性は否定されました。プラセボ群では死亡の報告はありませんでした。

(2011 年6月カットオフ)

<継続期終了時解析>
・ 主な副作用

副作用発現率は111例(99.1%)でした。最も多く認められた副作用は、口内炎47例(42.0%)であり、次いで高コレステロール血症34例(30.4%)、ざ瘡29例(25.9%)、アフタ性口内炎及び鼻咽頭炎各24例(21.4%)、無月経及び尿路感染各18例(16.1%)、疲労及び口腔内潰瘍形成各17例(15.2%)でした。
・ 重篤な有害事象
重篤な有害事象の発現率は37.5%でした。2 例を超えて認められた事象はてんかん6 例(5.4%)及び肺炎3例(2.7%)でした。重篤な副作用は16例(14.3%)で発現しました。卵巣嚢胞及び肺炎が2例に発現し、その他の事象の発現はいずれも1例でした。
・ 投与中止に至った有害事象
投与中止に至った有害事象は10例(8.9%)にみられました。内訳は、皮膚毒性、膵癌、血中リン減少、副鼻腔癌、痙攣、過敏症、血管浮腫、気管支痙攣、横紋筋融解症、蛋白尿、限局性浮腫、下痢及び倦怠感が各1例(0.9%)でした。
・ 死亡
本試験のコア期終了時解析のデータカットオフ日までに死亡が1例(0.9%)に認められ、死因はてんかん重積状態でした。アフィニトールとの関連は否定されました。本試験の継続期終了時解析では、新たな死亡の報告はありませんでした。

(2015 年2月カットオフ)

アフィニトール錠2.5mg・5mg【効能又は効果】(抜粋)
4.結節性硬化症
アフィニトール分散錠2mg・3mg【効能又は効果】
結節性硬化症