アフィニトール
結節性硬化症(TSC)
監修:大野耕策 先生(鳥取大学名誉教授)
主な副作用とその対策
アフィニトール®の主な副作用とその対策
アフィニトール®投与に伴う主な副作用として、適正使用ガイドには以下が掲載されています。ここでは、特に口内炎、感染症、間質性肺疾患についてご紹介します。詳細は、適正使用ガイドをご覧ください。
≪主な副作用≫
間質性肺疾患(肺臓炎、間質性肺炎、肺浸潤等)
感染症
腎障害
口内炎
高血糖、糖尿病
脂質異常
皮膚障害
貧血、ヘモグロビン減少、白血球減少、リンパ球減少、好中球減少、血小板減少
口内炎
- 本剤の投与により、口内炎、口腔粘膜炎、口腔内潰瘍等があらわれることがあります。
- コア期終了時解析における発現状況は以下のとおりでした。
- ・EXIST-2試験では、口内炎の副作用は59例(74.7%)に認められ、そのうちグレード3/4は3例(3.8%)に認められました。
- ・EXIST-1試験では、口内炎の副作用は47例(60.3%)に認められ、そのうちグレード3/4は7例(9.0%)に認められました。
- ・EXIST-3試験では、口内炎の副作用は全例で137例(55.5%)、低トラフ群で58例(49.6%)、高トラフ群で79例(60.8%)に認められました。そのうちグレード3/4はそれぞれ9例(3.6%)、4例(3.4%)及び5例(3.8%)に認められました。
- 異常が認められた場合は、適正使用ガイドの「減量・休薬基準/治療指針」の項を参考に休薬又は減量するなど適切な処置を行ってください。
- アルコールあるいは過酸化水素を含む含嗽剤で処置をすると、状態を悪化させる可能性があるため避けてください。真菌感染症が診断されていない場合は、抗真菌剤を使用しないでください。
■自覚的症状、他覚的症状
自覚的症状 | 他覚的症状 | ||
---|---|---|---|
自覚的症状 | 口腔内の接触痛・出血・冷温水痛 咀嚼障害 口腔乾燥 嚥下障害 口腔粘膜の腫脹 味覚障害 開口障害 |
他覚的症状 | 口腔粘膜の発赤 潰瘍 紅斑 偽膜 びらん 出血 アフタ |
厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル:抗がん剤による口内炎(平成21年5月)
[ http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1l09.pdf ]より引用
〈口内炎の発現状況〉
EXIST-2試験、EXIST-1試験及びEXIST-3試験において、副作用として報告された口内炎のCTCAEグレード別発現頻度は下表のとおりでした。
〈口内炎の発現時期〉
〈患者・保護者への指導〉
- アフィニトール®投与開始時には、患者・保護者に口内炎がおきる可能性がある点を説明し、毎日口腔内を観察して異常があった場合には、主治医や看護師、薬剤師に伝えるように指導してください。
患者・保護者への指導
患者・保護者によるセルフケアでは、以下の点を指導してください。
- ●口腔内を注意して観察する。
- ●粘膜の変化(紅斑、潰瘍、出血等)をみつけたら主治医や看護師、薬剤師に連絡する。
〈治療方法〉
- 口内炎には確立した治療方法はありません。口内炎ができる前からセルフケアを患者に指導するとともに、症状にあわせた対症療法をおこなってください。
・含嗽剤等による保存的処置(口腔ケア)
―最低1日3回、できれば1日8回の含嗽による口腔内保清、保湿および消炎鎮痛、組織修復、ブラッシング(歯みがき)等の口腔ケアを継続することが大切です。
口内炎の予防としても有効なため、口内炎ができる前からおこなうよう患者に指導してください。・消炎および鎮痛薬
―疼痛の程度によって、局所麻酔薬による含嗽のほか、アセトアミノフェン又は非ステロイド性抗炎症薬(解熱消炎鎮痛薬:NSAIDs)、麻薬系鎮痛薬、副腎皮質ホルモン剤などを使用します。
・粘膜保護
―口腔内の乾燥は口内炎の発生や増悪因子と関連があるため、含嗽や保湿剤による保湿に努めます。
〔参考〕
■口腔ケア対処例
使用薬剤 | 使用目的 | 使用方法 |
---|---|---|
デキサメタゾン軟膏(口腔用軟膏)1日1~数回 | びらん又は潰瘍を伴う口内炎 | アフィニトール®で発症する粘膜炎は、アフタ性口内炎と同じ病態。潰瘍面に塗布すると接触痛が軽減する。 |
生理食塩水(NaCl 9gを水1,000mLに溶解)の含嗽水 | 口腔ケア介入が困難な程の重症口内炎、口腔乾燥 | 頭頸部領域の放射線化学療法、造血幹細胞移植時の重症口内炎に対して1日5回~8回嗽水する。口内炎で疼痛が強い場合も、粘膜の刺激が少なく含嗽できる。 |
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物として10mgを水または微温湯500mLに溶解した含嗽水(2%重曹水、1日量) | 手術周術期の口腔ケア、咽頭炎、扁桃炎、口内炎 | 一般的な軽度の口内炎、粘膜炎に対して1日5回~8回含嗽する。粘膜保護、創部治癒促進作用があるが、消毒作用はない。 |
アズレンスルホン酸ナトリウム水和物として10mg、グリセリン60mL、水500mLに溶解した含嗽水に、リドカイン塩酸塩 (1mL中40mgの液剤) 5mL/10mL/15mLのいずれかを添加した鎮痛剤入り含嗽水 |
口腔内乾燥症、放射線治療による唾液分泌減少時の口腔乾燥 | 放射性口内炎、化学療法による口内炎の疼痛、咽頭炎による嚥下痛いに使う。食事の口内痛は毎食前(直前)に含嗽する。1日20mLを口腔内に含みゆっくり口腔内でぐちゃぐちゃ含嗽を2分間行う。 |
非ステロイド系抗炎症薬(消炎鎮痛シロップなど) | 放射線性口内炎、化学療法による口内炎の口腔粘膜の痛み、咽頭炎による嚥下痛 | 口内炎が強く、食事の際の粘膜疼痛、嚥下時痛に有効。食事の15~30分前に服用、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物・グリセリン・リドカイン塩酸塩の含嗽水と併用するとよい。
※注意:シスプラチンを使うレジメ(FP-R)では、腎機能障害のリスクが増大するのでアセトアミノフェンに変更する(1,000mg分3、1日)。 |
ジメルイソプロピルアズレン(300g中 0.1g含有の軟膏剤)150mgとリドカイン塩酸塩(1mL中20mgのゼリー剤)1本30mLを混合した軟膏剤 | 口唇部、類粘膜部の放射線、化学療法時の粘膜炎 | 口唇、舌等の口腔粘膜炎患者に直接塗布する。効果持続時間は10分から15分と短い。口内炎が限局し、局所的に使いたい場合に有効。 |
参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル、抗がん剤による口内炎(厚生労働省、平成21年5月)
感染症
〈本剤の投与にあたって〉
- 本剤投与に先立って感染の有無を確認してください。
- 感染症に罹患している場合には本剤投与前に適切な処置を行ってください。
- 本剤投与中にリンパ球や好中球の減少が認められた場合には、感染症の発現にも注意してください。
- 本剤投与開始後に、感染症が認められた場合には、適正使用ガイドの「減量・休薬基準」の項を参考に休薬又は減量するなど適切な処置を行ってください。侵襲性の全身性真菌感染と診断された場合、直ちに本剤の投与を中止し、適切な抗真菌剤を投与してください。
- 対症療法の薬剤選択に際しては、本剤の相互作用(併用注意)について確認してください。
〈感染症の発現状況〉
EXIST-2試験、EXIST-1試験及びEXIST-3試験において、副作用として報告された主な感染症のCTCAEグレード別発現頻度は下表のとおりでした。
〈感染症の発現時期〉
間質性肺疾患(肺臓炎、間質性肺炎、肺浸潤等)
〈本剤の投与にあたって〉
-
肺に間質性陰影を認める患者は、肺臓炎、間質性肺炎、肺浸潤等の間質性肺疾患が発症、重症化するおそれがあるため、本剤を慎重に投与してください。
-
本剤投与開始前は、胸部CT検査を実施し、咳嗽、呼吸困難、発熱、倦怠感等の臨床症状の有無と併せて、投与開始の可否を慎重に判断してください。
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本剤投与中は、新規又は悪化した呼吸器系の症状が認められた場合、速やかに担当医に連絡するよう患者にご指導ください。
-
本剤投与開始後は、定期的に胸部CT検査を実施し、肺の異常所見の有無を慎重に観察してください。また、臨床症状についても観察を十分に行ってください。
-
小児に対する胸部CT検査実施に際しては、診断上の有益性と被曝による不利益を考慮してください。
-
画像検査を頻回に行うことが難しい場合には、本剤投与前及び投与中に酸素飽和度(SpO2)や呼吸数の測定、肺機能検査、KL-6やSP-D等のバイオマーカーの測定を行うことで、間質性肺疾患を診断する際の参考となります。
-
本剤は免疫抑制作用を有するため、特に感染性の肺炎(ニューモシスチス肺炎等)については注意して鑑別してください。
-
異常が認められた場合には、適正使用ガイドの「診断指針」の項を参考に必要に応じて肺機能検査及び追加の画像検査を行ってください。また、適正使用ガイドの「減量・休薬基準」の項を参考に休薬又は減量するなど適切な処置を行ってください。
-
適切な治療を行うために、適正使用ガイドの「間質性肺疾患と鑑別すべき疾患」の項を参考に、必要に応じて追加の検査を検討・実施し、感染症や原疾患(腫瘍)等に起因する症状と鑑別してください。
〈発現状況〉
EXIST-2試験、EXIST-1試験及びEXIST-3試験において、副作用として報告された間質性肺疾患のCTCAEグレード別発現頻度は以下のとおりでした。
〈診断指針〉
-
臨床症状が認められた場合には、異常所見の有無を問わず〈臨床所見に基づくフローチャート〉を参考にしてください。
-
画像上の異常所見が認められるものの、臨床症状が認められない場合には、〈画像所見に基づくフローチャート〉を参考にしてください。
間質性肺疾患の診断指針
<臨床所見に基づくフローチャート> | <画像所見に基づくフローチャート> |
咳嗽(特に乾性咳嗽)、呼吸困難、発熱等の臨床症状がある。 | 画像に異常所見が認められる。 |
胸部CT検査による評価 呼吸器専門医※に相談してください。 |
呼吸器専門医※に相談してください。 |
鑑別診断のため、呼吸器専門医※と以下の検査を検討・実施してください。 ・SpO2、SaO2等 ・HRCTによる画像評価 ・血液検査(血算、血液像等) ・KL-6、SP-D等 ・β-Dグルカン サイトメガロウイルス抗原 ・細菌塗沫・培養・DNA検査 ・気管支鏡検査 ・肺機能検査:肺活量、肺拡散能力(DLCO) |
咳嗽(特に乾性咳嗽)、呼吸困難、発熱等の臨床症状について注意深く観察してください。 |
間質性肺疾患の診断 | 臨床症状が認められた場合には、<臨床所見に基づくフローチャート>にしたがって診断してください。 |
間質性肺疾患の治療へ | |
呼吸器専門医※と相談しながら、診断・治療を進めてください。 感染症と診断された場合には感染症の項(p.34)を確認してください。 ※小児の場合には、小児の間質性肺疾患の診断及び治療が可能な医師と相談してください。 |
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