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有効性と安全性(小児)

「禁忌を含む使用上の注意」等はこちらをご参照ください。

※ ゾレア皮下注シリンジは、ゾレア皮下注用(凍結乾燥製剤)と薬物動態を比較した「生物学的同等性試験」の成績をもとに承認されたため、気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)及び特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)の患者を対象とした国内臨床試験は実施されておりません。

小児に対する臨床効果

1.国内第相小児臨床試験(B1301試験)1)2)

1) 社内資料:喘息患者を対象とした国内小児臨床試験 B1301 試験〔XOLU00014〕(承認時評価資料)

2) Odajima, H. et al.: Allergol. Int. 64(4), 364, 2015〔XOLM00399〕
本研究はノバルティスが実施しました。試験デザイン、データ収集、データ解析、中断、レポートの執筆の役割を担いました。

本試験で用量設定に用いた投与量換算表は現在承認されている投与量換算表と異なるため、現在の承認内容とは異なる用量での成績が含まれますが、承認時に評価された資料であるため紹介します。

(1)試験デザイン

目 的

日本人小児喘息患者を対象に、ゾレア投与24週後の血清中遊離IgE濃度の幾何平均値が25ng/mL*1(目標濃度)以下に抑制されることを検討する。

*1 血清中総IgE濃度25ng/mLは、10IU/mLに相当する。

試験方法

多施設共同、非対照、非盲検試験

主要評価項目

投与24週後の血清中遊離IgE濃度

副次評価項目

投与24週後の喘息症状点数、日常生活点数、夜間睡眠点数、QOLの評価など

探索的評価項目

喘息増悪発現頻度、喘息増悪による入院

対 象

JPGL(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン)2008で定義される最重症持続型のアレルギー性喘息患児*2(6~15 歳)38例

*2 長期管理薬[高用量の吸入ステロイド薬(>200μg/日のフルチカゾンプロピオン酸エステル〔FP〕*3又は相当量)及び2剤以上の喘息治療薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン薬、クロモグリク酸ナトリウム、長時間作用性β2刺激薬、又は経口ステロイド薬)]を使用しても喘息症状を十分にコントロールできない。

*3 フルチカゾンプロピオン酸エステル〔FP〕の小児における本邦承認用量は200μg/日までである。

投与方法

ゾレアの1回あたりの投与量は、観察期に測定したベースラインIgE濃度及び体重を基に投与量換算表(なお、現在承認されている投与量換算表とは異なる)を用いて個々に決定し、1回75~375mgを4又は2週間隔で皮下投与した。
治療期は、長期管理薬の用法・用量を一定にした長期管理薬固定期(固定期:16週間)とその用量を調整した長期管理薬調整期(調整期:8週間)から構成された。ゾレアの最終投与から16週後に追跡調査を実施した。

解析計画

主要評価項目では、PK解析対象集団*4を対象に、ゾレア投与24週後の血清中遊離IgE濃度は幾何平均値を算出し、血清中遊離IgE濃度が対数正規分布に従うと想定して95%信頼区間を算出した。副次評価項目では、full analysis set(最大の解析対象集団:FAS)を対象に、喘息症状点数、日常生活点数、夜間睡眠点数は記述統計を用いて要約した。QOLの評価、喘息増悪頻度、入院頻度は、Wilcoxon符号付き順位検定によりベースラインと比較した。

*4 PK解析対象集団:投与後の少なくとも1時点で薬物濃度データが得られたすべての被験者。

投与スケジュール
投与スケジュール

* 長期管理薬[高用量の吸入ステロイド薬(>200μg/日のフルチカゾンプロピオン酸エステル〔FP〕又は相当量)及び2剤以上の喘息治療薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン薬、クロモグリク酸ナトリウム、長時間作用性β2 刺激薬、又は経口ステロイド薬)]

4. 効能又は効果(抜粋)

〇 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)

5. 効能又は効果に関連する注意(抜粋)

<気管支喘息>

5.1 高用量の吸入ステロイド薬及び複数の喘息治療薬を併用しても症状が安定せず、通年性吸入抗原に対して陽性を示し、体重及び初回投与前血清中総IgE濃度が投与量換算表で定義される基準を満たす場合に本剤を追加して投与すること。症状が安定しないとは、下記の症状のいずれかが改善しないことを示す。

小児の場合

  • 毎日喘息症状が観察される
  • 週1回以上夜間症状が観察される
  • 週1回以上日常生活が障害される

7.用法及び用量に関連する注意(抜粋)

<気管支喘息>

7.5 用法及び用量どおり、16週間使用しても効果が認められない場合には、漫然と投与を続けないよう注意すること。

(2)投与24週後の血清中遊離IgE濃度[ 主要評価項目 ]

PK解析対象集団において、ゾレア投与24週後の血清中遊離IgE濃度の幾何平均値は15.551ng/mLであり、目標値の25ng/mL*5以下に抑制された。

 血清中遊離IgE 濃度(ng/mL)
n 幾何平均値 95%CI
38 15.551 (13.844, 17.469)

判定基準: 投与24週後の血清中遊離IgE濃度の幾何平均値が25ng/mL(目標濃度)以下となる。

*5 血清中総IgE濃度25ng/mLは、10IU/mLに相当する。

(3)喘息症状点数、日常生活点数、夜間睡眠点数[ 副次評価項目 ]

FASにおいて、喘息症状点数、日常生活点数、夜間睡眠点数の各点数*6は、いずれもゾレア投与24週後にベースラインより減少した。

点数

*6 喘息症状の判定基準
患者が記録した喘息症状(日常生活及び夜間睡眠の障害も含む)を基に、下記の基準にて算出した。
2週間毎に算出した1週間あたりの平均点数を評価した。

項目分類スコア合計
喘息症状の程度
(1日3回記録)
症状・徴候 大発作(苦しくて動けない) 9 0~30点/日
中発作(苦しくて横になれない) 6
小発作(苦しいが横になれる) 3
喘鳴 1
胸苦しい 1
症状なし 0
あり 1
なし 0
日常生活の障害
(1日1回記録)
全くできなかった 18 0~18点/日
あまりできなかった 12
少し妨げられた 6
普通にできた 0
夜間睡眠
(1日1回記録)
全然眠れなかった 9 0~9点/日
時々目が覚めた 6
症状があったが眠れた 3
よく眠れた 0

(4)QOL*7への影響[ 副次評価項目 ][ 参考情報 ]

FASにおけるゾレア投与24 週後のQOLスコアは、以下の通りであった。

スコア

Wilcoxon 符号付き順位検定(ベースラインとの比較)(n=37) Median

*7 QOLの判定基準
QOL は「小児気管支喘息患児と親又は保護者のQOL 調査票- 簡易改訂版2008(Gifu)」に基づき評価した。10問の質問(それぞれ1点~5点で評価)を5つの要因(精神的負荷、喘息発作の原因、症状の不安定さ、喘息の受容、運動の負担)に区分し、5つの要因はさらに身体的ドメイン及び精神的ドメインに区分した。身体的ドメイン及び精神的ドメインの各スコア、及びこれらの合計スコアを評価した。

(5)喘息増悪*8発現頻度[ 探索的評価項目 ]

FASにおいて、ゾレア投与期(0~24週)の喘息増悪発現頻度は0.92回/患者・年であり、ベースラインの2.99回/患者・年に比べて有意に減少した(p<0.001、Wilcoxon符号付き順位検定)。

喘息増悪発現頻度

Wilcoxon 符号付き順位検定(ベースラインとの比較)(n=38)

*8 本試験における喘息増悪の判定基準:吸入ステロイド薬の維持用量からの倍増を3 日間以上必要とする、又は全身性ステロイド薬による治療を必要とする喘息症状の悪化。

(6)喘息増悪*9による入院[ 探索的評価項目 ]

FASにおいて、ゾレア投与期(0~24週)の喘息増悪による入院は0.29回/患者・年であり、ベースラインの1.33回/患者・年に比べて有意に減少した(p<0.001、Wilcoxon符号付き順位検定)。

喘息増悪による入院

Wilcoxon 符号付き順位検定(ベースラインとの比較)(n=38)

*9 本試験における喘息増悪の判定基準:吸入ステロイド薬の維持用量からの倍増を3日間以上必要とする、又は全身性ステロイド薬による治療を必要とする喘息症状の悪化。

(7)安全性

本試験の安全性解析対象集団における副作用は26.3%(10/38例)に認められた。主なものは、頭痛4例(10.5%)、注射部位疼痛3例(7.9%)、注射部位紅斑、注射部位腫脹、蕁麻疹各2例(5.3%)であった。重篤な副作用は2例(5.3%:喘息増悪と蕁麻疹)に認められた。また、投与中止例及び死亡例は報告されなかった。