疾患について
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異
METとは
1)Peruzzi B, Bottaro DP.: Clin Cancer Res 12(12), 3657-3660, 2006
2)Fujino T, et al.: J Thorac Oncol 2019; 14(10), 1753-1765, 2019
3)Kawakami H, et al.: Cancers(Basel) 6(3), 1540-1552, 2014
4)Bean J, et al.: Proc Natl Acad Sci U S A 104(52), 20932-20937, 2007
5)Dimou A, et al.: PLoS One 9(9), e107677, 2014
6)Tong JH, et al.: Clin Cancer Res 22(12), 3048-3056, 2016
間葉上皮転換因子(mesenchymal-epithelial transition factor:MET)は、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor:HGF)をリガンドとする受容体型チロシンキナーゼであり、細胞の成長、増殖及び生存に関与しています1)。METは、細胞外ドメイン、膜近傍(juxtamembrane:JM)ドメイン、チロシンキナーゼ(TK)ドメインなどで構成されています2)。
一部の腫瘍でMETの過剰発現、MET遺伝子変異や増幅が報告されており3,4)、これらを有する患者の予後は不良と報告されています。5,6)。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異とは
7)Kong-Beltran, M., et al.: Cancer Res. 66(1), 283-289, 2006
8)Liu, X., et al.: Clin Cancer Res. 17(22), 7127-7138, 2011
9)Christensen, JG., et al.: Cancer Lett. 225(1), 1-26, 2005
非小細胞肺癌(NSCLC)では、膜近傍ドメインをコードする領域の変異によってMET遺伝子エクソン14を欠失し、METシグナル伝達経路が亢進する遺伝子異常(MET遺伝子エクソン14スキッピング変異)が報告されており7)、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異はNSCLCにおける発がんに関わるドライバー因子であると考えられています。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異を有するNSCLCでは、膜近傍ドメインの欠失によりMETシグナル伝達経路の制御異常が生じ、下流のシグナル伝達経路(RAC/RHO、PI3K/AKT、ERK/MAPK、STAT3/5等)が亢進することで、腫瘍の増殖、生存、浸潤・転移、及び血管新生が促されると考えられています7,8,9)。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異の頻度
10)Onozato, R., et al.: J. Thorac. Oncol. 4(1), 5-11, 2009
11)Seo, JS., et al.: Genome Res. 22(11), 2109-2119, 2012
12)Cancer Genome Atlas Research Network. Nature. 511(7511), 543-550, 2014
13)Awad, MM., et al.: J Clin Oncol. 34(7), 721-730, 2016
14)Mitsudomi, T.: Jpn J Clin Oncol. 40(2), 101-106, 2010
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異は、NSCLC患者の3~4%に認められています10-13)。
NSCLC患者(933例)での遺伝子変異型の分布13)
方法:さまざまな癌腫におけるMET遺伝子エクソン14スキッピング変異の頻度を調査するため、次世代シークエンシングを用いて固形癌及び血液悪性腫瘍患者6,376例を解析した。 日本人肺腺癌患者における原因遺伝子変異発現率14)
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性非小細胞肺癌の自然史
社内資料:MET制御異常を有するNSCLC患者における自然経過に関する
リアルワールドエビデンスを構築する後ろ向きの観察研究(X2401試験)
本データは、承認時申請資料として提出しています。照会事項にて本試験の結果を踏まえたタブレクタの臨床的位置づけに関する見解を求められ、回答を行いました。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性NSCLCの患者背景
MET制御異常(MET遺伝子エクソン14スキッピング変異又は増幅)を有するNSCLC患者の自然経過(患者背景、治療情報、転帰等)に関するリアルワールドエビデンスの構築のために実施された後ろ向きの観察研究(X2401試験)において、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性NSCLCは比較的高齢者に多く認められ、診断時の年齢中央値は73歳でした。また、診断時に32.4%の患者が脳転移を有していました。
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性NSCLCの予後
X2401試験において、MET阻害剤投与歴のないMET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性NSCLC患者の全生存期間(OS)中央値は10.7ヵ月でした。