もつれない患者との会話術
ポイント
部分的に非を認める場面はあるにしても,医療行為や病院のシステム本体にミスがない場合,執拗なクレームに対しては毅然とした態度を貫き通すことで,相手が諦める場合があります。本当に患者の言い分が正しいのか,見極めることが重要です。
解説
●このケースの後日談
病院としては医療行為そのものには何らミスがあるわけではないと判断し,頑として患者宅に行くことに同意しませんでした。また,家族旅行のキャンセル料についても恐喝一歩手前の話し方であり,病院に探りを入れている様子でした。病院としては,家族旅行に行けなかったことは結果として謝罪したものの,キャンセル料の弁済には応じられないという姿勢を通して息子の出方をみることにしました。その結果,しばらくして電話がかかってこなくなりました。
●患者の言い分が正当か,よく考えてみる
医療機関の窓口には様々な理由で弁済を求める患者がいます。たとえば,「診療科が休診とは知らずに来院したので交通費を負担してほしい」とか「診察の遅れで予約時間がずれ込み,会議に間に合わなかったからなんとかしろ」など,担当者に対して鬱憤を晴らす患者が多くなってきました。心情的に理解できる場合もありますが,患者の言い分をそのまま受け入れるなら,相当の出費を要します。
しかし,よくよく考えてみると,たとえば,診療科が休診とは知らずに来院した患者の場合,代替の医師の診察が可能である旨を説明することで患者が望めば受診できますし,また予約時間がずれ込んだ場合は事前に会議の時間を調整するか,診察日を変更するなどして対処可能であり,必ずしも医療機関が責められることはないのです。
医療機関の対応
以前は窓口で説明することで納得していただいた患者が多かったのですが,最近は「ひとこと言わずにいられない」という患者のほうが多くなってきました。だからと言って,患者の言いなりになっていては,その他の患者に迷惑が及ぶことになってしまいます。
不満を抱いている患者が冷静になるよう,丁寧に相手の言い分を聞くことは大切なことですが,内容に応じて判断し,時に毅然とした態度を取ることも必要です。