もつれない患者との会話術
ポイント
医学的に外泊を認められる基準,条件をあらかじめ理解し,患者の訴えを聞いて適切に判断する必要があります。さらに,外泊期間中,どのような状況のリスクがあり,誰(本人,家族,医療機関など)がその責任を負うのか,明確にしておかなければなりません。当然,安易な外泊許可は慎むべきです。
解説
医療機関では,様々な理由(治療上および患者家族の事情など)によって,療養上支障がない場合や治療効果が望める場合などに外泊を許可しています。
筆者は以前,外泊に関する取り扱い通知が厚生労働省から過去に出されているか辿って調べてみたことがあります。外泊期間中の入院料の算定に関する規定はありましたが,外泊の取り扱いそのものの通知などは見当たりませんでした。また,厚労省に「外泊として認める適正な理由はあるのか」「外泊としての適正な日数はあるのか」と問い合わせたところ,「一切ない」との回答でした。
厚労省の立場としてはおそらく,患者の外泊については個々の状況・条件にもよるし,外泊を認めるか認めないか,外泊期間はどのくらいかなどはすべて主治医の責任に帰するべきもので,行政が口を挟むべきものではないというスタンスなのでしょう。
医療機関の対応
前述のように,外泊に関する判断・決定は,すべて主治医の責任においてなされると考えられ,外泊させる場合には個々の患者に,次のような対処をする必要があります。
- 外泊に際しては外泊許可書などにより管理すること
- 医師が理由および必要性を考慮して許可すること
- 出帰院日時の確認を行うこと
- 外泊時の注意事項(外泊期間中の注意すべき点,起こりうる危険性など,異常が発生した場合には直ちに連絡をすることなど)を患者および家族に説明し,許可書(医療機関名,連絡先電話番号などを明記)を携帯させること
患者の「気分転換のため」という理由では認められにくいことを銘記しておきましょう。医師,医療従事者の管理下において治療を行うために入院させているのであって,外泊となれば,数日であれ,その管理を離れ,目の届かない状況になるからです。
外泊を許可するにあたっては事前に,そもそも外泊させる必要性はあるのか,また,治療にどの程度影響があるのか,あるいは外泊により身体への危険度はどの程度増すのか,などを総合的に勘案した上で判断する必要があります。このように考えれば,「気分転換のため」という理由で,簡単に外泊を許可することはありえないことになります。
また,最近は,医療収入の伸びが思わしくなく,特に入院収入が減少している医療機関の中には,外泊を制限している医療機関もあると聞きます。しかし,患者も社会生活を営む個人である以上,入院中であっても医療機関の外で活動を営む必要が生じることがあります。
外泊については,必要とする理由ならびに療養上妥当と認められる期間を勘案した上で決定されるべきで,医療機関の経営を優先して判断することのないよう対応したいものです。