もつれない患者との会話術
ポイント
先発品の場合でも薬を変えることにより体調に変化をきたす患者がいます。品質が異なる後発品(ジェネリック)の場合はなおさらと言えるでしょう。調剤薬局の調剤料などを加えると必ずしも先発医薬品より安いと言えない場合もあり,積極的に勧めていない医療機関もあると聞きます。希望する患者には,このような状況をよく説明し,理解を得た上で,交付する必要があります。
解説
2008年度の診療報酬改定では,後発品の使用促進を目的に「処方せんの様式」が変更になりました。改定前は医師が「後発薬に変更可」と処方せんに記して署名したものだけが後発薬を購入できましたが,改定以後は「後発薬への変更不可」の場合のみ医師が署名する方式となりました。この結果,医師の署名のない処方せんについては,薬剤師が患者の同意を得て,処方した医師に確認することなく,別銘柄の後発品を調剤できるようになったのです。その後,2012年度の診療報酬改定では,さらなる後発品の使用促進のため,一般名による記載を含む処方せんを交付した場合に加算できるようなり,普及に拍車がかかってきました。
改めて説明する必要もないと思われますが,後発医薬品とは,先に開発された先発医薬品(新薬)の特許期間(20~25年)が終了したあとに,製造・販売される医薬品を指します。先発医薬品と同じ有効成分・効能効果がありながら,開発費用と時間が抑えられるため新薬の2~7割程度の薬価となっています。
●今後考えられること
診療報酬改定により,処方医師への確認なしに薬剤師が別の銘柄を調剤することが認められました。
実際問題として,包装や色合いがそれまでと違うだけで異議を申し立てる患者が多くいます。まず,このような患者の説得から始めなければなりません。また,医師の指示なしに薬剤師が変更することへの患者の不信感もあります。医師への信頼と同等の信頼を薬剤師が得るまでに時間を要すると考えられます。
医薬分業の進展により,調剤薬局において1人当たりの説明時間が長くなり,調剤変更に伴う処方医師への連絡等も従来より多くなり,カルテの薬剤名の変更作業も増えてきました。また,後発品に切り替えたものの,体調が変化し,従前の薬に戻すよう求められた場合,費用面などでいろいろな問題を調剤薬局側が抱えるようになるのではないかと危惧します。
一方,外来および病棟では,注射薬をジェネリックに切り替える医療機関も増えてきました。というのも,注射薬が先発品であるか否か,患者はあまり気に留めないこと,また医療経営が厳しい中,コスト抑制のためであります。実際,注射薬を後発品に変更しただけで年間数百万円~数千万円の医薬品費が軽減できた医療機関もあると聞きます。