もつれない患者との会話術
ポイント
小銭は額面価格の20倍までなら窓口側では受け取らなければなりません。どの程度小銭を持っていそうか,支払う動作の手際など,患者の様子をさりげなく見て,トラブルになる可能性を判断します。他の患者の迷惑にならないよう,列の外で小銭を整理してもらうなど,患者の流れをうまく誘導する声かけも必要です。
解説
医療機関の窓口に限らず,スーパーマーケットやコンビニなどのレジで高齢の方が小銭で支払いをしようとする光景を見かけることがあります。筆者も以前,スーパーのレジで中年女性がいっぱい詰まった封筒から1円玉を並べて会計している場面に遭遇し,急いでいる身にはつらい状況であったことを覚えています。会計窓口の担当者としても,混んでいるときにこのような行為をする患者がいると,心の中では「早くしてよ!」と叫びたいところでしょう。
実は,小銭での支払いに関しては,「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」で規定されています。具体的には,同法第7条(法貨としての通用限度)において「貨幣は,額面価格の20倍までを限り,法貨として通用する」というルールがあるのです。ここでいう「法貨」とは,「法定貨幣」の略で,「国法をもって強制通用力を与えられた貨幣」(広辞苑)を指します。
したがって,1円玉は20円まで,5円玉は100円まで,10円玉は200円まで,50円玉は1,000円まで,100円玉は2,000円まで,500円玉は10,000円までです。会計窓口での支払いも,この貨幣ごとの法定枚数20枚を目安に金銭授受を行えばよいのであり,法定枚数を超える分については受け取りを拒否しても差し支えなく,他の貨幣での支払いを要求してもよいことになります。
医療機関の対応
「法貨」に関する法律,概念を知っていたとしても,接遇に気を遣っている医療機関では,実際には小銭だからといって受け取りを拒否するのは難しいと思われます。また,現実に大量の小銭で支払おうとする患者さんも多くはないでしょう。
このため,1回目は小銭での支払いに応じつつ,次回からは「額面の20倍までしか通用しない」旨の説明をするようにすればよいと思います。その際,患者の様子・機嫌を見計らいつつ,可能なら法律で決まっていることも説明してもよいと思われます。
さらに,常に小銭が溜まっている,小銭の使い道に困っている様子がうかがえるなら,「銀行の硬貨計算機で両替してくれるところもありますよ」と丁寧に説明すれば,一層よろしいかと思います。
関係法令など
- 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条(法貨としての通用限度)
貨幣は,額面価格の20倍までを限り,法貨として通用する。