もつれない患者との会話術
ポイント
医師が作成する文書の意義は重く,安易に返金に応じるべきではありません。手数料であることを強く訴え,患者に納得してもらう必要があります。また,返金に応じられないことなどを事前に十分説明をすることで,後のトラブルを回避できるようになります。
解説
●文書料は作成に要した手数料であり,返金に応じるべきでない
医師の作成する文書は社会的に影響を及ぼすこともあり,虚偽の記載をしようものなら刑事上の責任を追及される場合すらあります。それ故,医師は適切な診断の下に1枚の文書を作成するのであり,文書料とは「作成に要した手数料」なのです。
ですから,窓口で「不要となったから返却したいので文書料を返してほしい」とか「使用しなかったので返却するから返金してほしい」と言われても応じるわけにはいかないのです。ここはやはり,患者に対してとことん説明し,納得してもらうべきです。仮に,このような状態が続くようでは医師の診療の意欲にも影響が出かねません。
●交付する文書に医師は全責任を負う
医師の交付する文書は,人の人生を狂わす事態になりかねないほど社会的に影響を及ぼすものです。それ故,医師は慎重に診断を行い,自己の持つ最高の技術や医学知識を駆使して1枚の文書を作成します。しかも,この文書は医師個人が作成するため,内容に関しては全責任がその医師に及ぶことになります。道義的な責任はもとより,場合によっては民事・刑事上の責任を負うことにもなりかねません。
医療に関心を持つ人が多くなっている今日,少しでも疑問が生じたりすると担当医に確認したり,納得できない場合にはセカンドオピニオンを利用したり,最終的には裁判に訴える場合もあります。記載内容に責任を問われる文書だからこそ,このケースのように簡単に返金に応じられないのです。
医療機関の対応
医療機関側としては診断書の作成手数料であることを強調して患者に納得してもらうようにすることです。
なお,支払い拒否が発生する原因の1つに,医療機関側の事前の説明不足も挙げられると思います。面倒でも,文書作成依頼を受けたときに「料金は○○円かかりますが……」と一言説明し,返却には応じられないことも併せて説明し,了解を得た上で作成すべきと思われます。説明する時間を要しますが,致し方ないと思います。医師にとっては,診療時間が長くなるのを気にしつつも,やはり事後のトラブルを考えると,根気強く対応することが求められると思います。