もつれない患者との会話術
ポイント
文書の有償・無償交付については医療機関によっては間違った対応が散見されますが,有償文書の範囲は療養担当規則第6条できちんと定められています。普段からその対象・範囲を把握し,また,なぜこの文書の交付にお金がかかるのか,窓口で的確に説明できるスキルを身に付けておきましょう。
解説
どの文書(証明書・意見書など)が有償で,どの文書が無償なのかは,療養担当規則第6条が根拠となります。ただ,この規定を読んでもわかりにくいことから,医療現場によっては,無償文書を有償扱いにしたり,有償文書を無償交付したりしている場合があるようです。
無償となる文書は,被保険者に保険給付を行う上で必要な証明書・意見書などのみであることに注意する必要があります。
無償文書,有償文書の代表例は次の通りです。
- 無償文書
高額療養費支給申請書,移送費支給申請書,埋葬料請求書など
- 有償文書
死亡診断書,各種生命保険会社や損保会社の診断書など
医療機関の対応
「保険給付」とは,健康保険法などで定める保険者に給付を義務づけた「法定給付」のことです。療養担当規則第6条は,これらに係わる文書について,医療機関は無償で交付しなければならないと定めているわけです。
一方,保険者が独自に被保険者に給付するものが「付加給付」であり,家族療養費付加金,埋葬料付加金,出産育児付加金などが代表例です。これらに係る文書は無償の対象から除かれます(医療機関は有償で交付することとなります)。
また,国・自治体で実施している各種助成制度に係る文書,生命保険会社・損害保険会社に係わる文書などについては有償となります。
なお,法律によっては無償で交付すべき文書を規定しているものもあるので,注意が必要です。たとえば,障害者自立支援法施行令などに基づく「指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)療養担当規程」第6条による自立支援医療に必要な証明書・意見書など,あるいは生活保護法第50条第1項に基づく「指定医療機関医療担当規程」第7条による生活保護法に基づく保護に係わる証明書・意見書などです。
医療機関においては,保険請求の際,請求漏れのないよう必死で点検に取り組んでいますが,意外と文書料については置き去りにされていないでしょうか。この際,見直しを行い,間違った請求をしていないか確認してもよいと思われます。「たかが文書料」かもしれませんが,「されど文書料」でもあります。その額は年間,数十万円~数百万円にも及ぶこともありうるからです。
関係法令など
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則第6条(証明書等の交付)
保険医療機関は,患者から保険給付を受けるために必要な保険医療機関又は保険医の証明書,意見書等の交付を求められたときは,無償で交付しなければならない。ただし,法第87条第1項の規定による療養費(柔道整復を除く施術に係るものに限る。),法第99条第1項の規定による傷病手当金,法第101条の規定による出産育児一時金,法第102条第1項の規定による出産手当金又は法第114条の規定による家族出産育児一時金に係る証明書又は意見書については,この限りでない。