もつれない患者との会話術
ポイント
医師の作成する各種文書はきわめて高度な内容であるにもかかわらず,内容・ボリューム面と料金面で患者の納得が得られない場合も多々あります。しかし,文書内容に対する医師の責任の重さに鑑み,堂々と患者に請求する姿勢が大切です。また,独占禁止法違反になるため,他院と統一料金にはできないことも説明します。一番のトラブル回避策は,あらかじめ料金一覧表を院内掲示しておくことです。
解説
●医療機関によって料金が異なるのは当然
医師は,自分が交付する文書の内容に関して,道義的な責任はもとより,場合によっては民事・刑事上の責任まで負います。このような責任のある文書だからこそ,それに見合う作成手数料が設定されるというのは当然です。一般的に文書料金は医師の技量,用途,内容量に基づき,医師,医療機関の良識と経営方針によって決定されます。このため,文書料金が医療機関によって異なるのです。
レストランのメニューを見て「値段が高い」と言う人がいますが,これは,最高の材料を使い,シェフが最高の技術を駆使し,じっくり時間をかけてつくり上げる裏の努力を知らないで評価しているようなものです。医師の作成する文書にも同じことが言えるのではないでしょうか。
●マスコミも注目する診断書料
以前,新聞に「診断書料どう決まる?─病院により3千円~8千円台も」というタイトルの記事が掲載されていました。内容は,読者の投書を基に,ある大学病院の診断書作成料に関して取材した記事です。
投書の内容は「某大学病院に入院していた妻の保険金請求に添付する診断書を請求したところ,1通8,400円の請求があった。書式は定まっており,作成に困難を伴うとは思えず,納得がいかない」というものでした。
そこで,記者がその大学病院に取材した結果,窓口担当者から「料金設定の明確な根拠はないようだ」との回答を得たことなどを記事としてまとめ,最後に「自由に料金を設定できるといっても,記載内容がほとんど同じで,これだけ差があれば患者は混乱する。医療機関はなぜその料金に設定したのか患者に説明すべきである。料金表を掲示していない病院は不親切だと思う」という主旨のコメントを加えていました。
関連した記事を紹介します。ある記者が厚生労働省に取材したところ,「診断書は治療に使用するものではないことから,健康保険の対象とはなっていない。料金は各医療機関の裁量で決定している」との回答を得たとしています。また,いくつかの病院に問い合わせた結果,多くの病院が「近隣病院を調べて同程度の額にしている」と回答,中には「算定根拠については答えられない」と,回答を拒否した病院もあったとしています。
●独禁法違反になるため,地区全体で同一料金にはなりえない
文書料金については以前から「高い」「医療機関ごとに違う」と言われ続けています。会計窓口で患者からの「たかだか紙1枚で,しかも数行程度記入して,これだけの料金……」と愚痴とも文句ともつかない言葉に遭遇している担当者も多いことでしょう。
しかし,医師会で統一料金体系ができないのは独禁法違反に問われるからです。したがって,上記の記事中の厚生労働省の回答の通り,「料金は各医療機関の裁量で決定する」こととなっているのです。
医療機関の対応
医療機関としては「当院としては適正な料金です」と胸を張って請求することです。
そして,料金一覧表を掲示し,納得していただくことも必要でしょう。レストランの料理は客が満足する味つけやボリュームであれば価格的にも客は納得します。しかし,医師の作成する文書が必ずしも患者の満足する内容であるとは限りません。その不満が文書料金への苦情となるのでしょう。