もつれない患者との会話術
ポイント
医療機関では,初診料など外来の基本診療料を「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年3月16日厚生省告示第54号)(以下「点数表」と言う)に基づいて算定していますが,算定方法を正しく理解していないことから医療機関によってまちまちな解釈のもと算定し,患者さんへ請求しているのが実態です。
解説
●医療機関によって異なる初診料の算定
点数表には初診料算定の基準として「患者が任意に診療を中止し,1カ月以上経過した後,再び同一の保険医療機関において診療を受ける場合には,その診療が同一病名または同一症状によるものであっても,その際の診療は,初診として取り扱う。前記にかかわらず,慢性疾患等明らかに同一の疾病または負傷であると推定される場合の診療は,初診として取り扱わない」と明記されています。この解釈によれば,本事例の場合は「医師の指示で6カ月後に来院したもの」であることから,診療は継続しており再診扱いとなります。
ちょっと古いデータになりますが,日本私立医科大学協会が全国私立医大附属病院72施設に「初診の定義」について調査(平成26年7月3日実施)しました。その結果を【参考】に紹介させていただきましたが,各保険医療機関が同じ点数表に基づいて算定していることから同じ解釈かと思いきや,医療機関によって算定基準が異なっているのに驚きます。
慢性疾患等明らかに同一の疾病または負傷である場合を除いて,6カ月以上あるいは3カ月以上受診歴がない場合に初診扱いとしている医療機関もいくつかありましたが,ばっさり月単位受診がない場合,初診扱いとしている医療機関も多々ありました。大学附属病院ですら算定基準がまちまちということは,全国の保険医療機関においても察して知るべしとのことと思います。
医療機関の対応
初診扱いの取り決めについて平成13年12月6日の朝日新聞朝刊によると,厚生労働省は「特に,何カ月という取り決めはない」と回答しています。昔の医療機関の窓口と違って,今は電子カルテを導入する施設も増えてきており,患者情報を瞬時に確認できる状況にあることから,経過観察の患者なのかどうかの情報も入力することで適正な算定が可能だと思います。初診料算定基準は,前回来院日からの空白期間にまったく関係なく,医師の判断ということになります。患者からすれば,算定基準がわかるはずもなく,医療機関に初めて受診するときが初診であり,一度初診料を支払えば,以後は再診と考えるのが当然と思うことでしょう。このような患者に説明しても理解してもらえず,医療機関としても対応に苦慮するところです。納得がいかないという患者に対しては,算定基準を示し理解を求めるしかないと思います。
参考
- 初診の定義についてのアンケート調査結果(初めて来院された場合を除く)
一般社団法人 日本私立医科大学協会,平成26年7月3日
対象施設:私立医大附属病院72施設 |
・6カ月以上受診がなく,医師が初診と判断した場合 |
30病院(41.7%) |
・3カ月以上受診がなく,医師が初診と判断した場合 |
16病院(22.2%) |
・期間は定めず,医師が初診と判断した場合 |
11病院(15.3%) |
・1年以上受診がなく,医師が初診と判断した場合 |
7病院(9.7%) |
・4カ月以上受診がなく,医師が初診と判断した場合 |
3病院(4.2%) |
・1カ月以上受診がなく,医師が初診と判断した場合 |
2病院(2.7%) |
・その他 |
治療を継続している科がない場合,最終受診日の内容により判断 小児科は1カ月以上受診がない場合, 最終来院日より2年以上経過している場合,等
|
3病院(4.2%) |
- 特に初診料が算定できない旨の規定がある場合を除き,患者の傷病について医学的に初診といわれる診療行為があった場合に初診料を算定する。
(診療報酬点数表:2016年4月改定より)