もつれない患者との会話術
ポイント
受診する患者の中には個人情報に関して敏感に反応を示す方もおり,保険証のコピーを取ることに同意しない方もいらっしゃいます。
解説
個人情報保護法制定以降,個人を特定できる情報を他人に提供することに敏感な方が増えてきました。医療機関でも昔は当然のように保険証のコピーを取ってカルテに貼付していた時期もありましたが,個人情報保護法制定以後は必要事項を転記しコピーを取らずに本人に返却しているところが増えてきました。日本郵便や銀行の窓口では,「免許証による本人確認の後,必要事項を転記し返却する」「コピーを取らずに必要事項を記入して返却する」などの対応を行っています。厚生局の指導でも,医療機関や調剤薬局においての「保険証等のコピーを保有することは,個人情報保護の観点から好ましくないので行わないこと」と指摘されるようになってきました。
医療機関の対応
数年前の新聞に「身分証明書のコピーを断わろう」と題した投書が掲載されていました。かいつまんで紹介すると「毎回,銀行から海外送金しているが,その都度,身分証明書の提示を求められ担当者がコピーしようとするが,そのたびにコピーはダメと言っている。最初は規則でコピーを取ることになっていると主張するが,それではその規則の提示と個人情報を絶対に漏らさないという誓約書を求めることにしている。そのような申し出をすると窓口担当者は必要な事項を転記して返却する。身分証明書は本人確認が目的であって,コピーが目的ではないからだ」といった内容でした。
医療機関における保険証の確認も,まさに本人確認が目的であって,資格要件が確認できればよいのであって,コピーすることが目的ではありません。
後々になって保険者から資格喪失により返戻となり保険証の確認有無が問われることを恐れてコピーを取るようにしている医療機関が多いと思われますが,保険証の確認ができればそれで後々の保険者との対応も問題ないはずです。最近では,個人情報保護に過敏な患者がいて診療終了と同時にカルテ以外の個人情報をすべて廃棄させるように医療機関に強行に申し出て対応に苦慮したという話を聞いたことがありました。ちょっと行きすぎた感じもします。平成27年9月から施行された改正個人情報保護法により,病歴については要配慮個人情報という扱いになり,情報の取得については必ず本人の同意を得ることが求められることになりました。診療申し込みの際,あるいは入院手続きの際には,個人情報の利用目的を明確に説明し,同意を得る必要があります。
改正個人情報保護法施行によりさらに取り扱いに注意しなければならなくなりました。
厚生局では「患者等の同意を得た上で行った場合であっても,保険証のコピーは基本的には好ましくない」と指導しています。
関係法令など
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則第3条(受給資格の確認)
保険医療機関は患者から療養の給付を受けることを求められた場合には,緊急やむを得ない場合等を除き,その者の提出する被保険者証によって療養の給付を受ける資格があることを確かめなければならない。