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既に身だしなみについて細かな規定があると思いますが,カラーリングについても日本ヘアカラー協会のレベルスケールを参考に,医療機関としてふさわしい水準を設定する必要があるでしょう。ただ,全般的には,“プロの医療人”らしい身なり・服装に自ずと帰着すると考えます。
筆者の勤務する病院においては就業規則の中で「患者に対しては,その感情心理を理解し親切丁寧を旨とし,不快,又は不安の念を与え或は刺激興奮させる如き服装又は言動をしてはならない」と規定していますが,おそらく読者の医療機関の就業規則も同様の文言になっているものと思います。
ただ,このような抽象的な文言では,どの程度の服装,言動までなら許容範囲なのか,具体的なイメージが伝わらず,病院によっては別途,身だしなみに関する基準を設けて指導していると思います。
参考までに,某病院の基準の中から「頭髪」について紹介します。
まず男性に対しては
女性に対しては
このような具体的な取り決めを「顔」「服装」「装飾品」「手」「靴」「口臭」「眼鏡」「携帯電話」に至るまで明記しています。「頭髪」だけでこれだけの項目が定められていることで驚かれた方もいることでしょうが,さらに詳細な項目を定めている医療機関もあると思います。換言すれば,ここまで細部に取り決めないと,歯止めが効かないのが現状なのです。
一般企業も“茶髪”については悩んでおり,各社それぞれ基準を設けています。日本ヘアカラー協会が数年前に実施した176社を対象とする調査によると,社員のヘアカラーを認めていると回答した会社は137社で,認めないと回答した会社は30社という結果でした。また,某リサーチ会社によると,10~50歳代の男性の50%,女性の89%が髪を染めているという調査結果もあります。このように,社会全般が年々茶髪に関して以前ほど気に留めなくなってきています。
以前,日本ヘアカラー協会の今井氏の「明るい職場づくりに必要なものとは」と題する講演記録を読む機会がありましたが,茶髪については,ダメで頭が悪い,協調性がないといった偏見が強いこと,日本人で黒髪の似合う人はほとんどいないこと,むしろレベルスケールでいうとレベル7か8あたりが綺麗であることなどが記されていました。
実際のところ,このレベルスケールに照らし,日本航空では「6」まで,ホテルオークラ,三菱東京UFJ銀行では「7」までを許可しています。このように各企業によってレベルが異なるのは,業種やサービス対応の相違の結果と思われます。
従来は数値化されていなかったために基準の設定が困難でしたが,現在ではこのレベルスケールで各企業に合った髪色が決められるようになってきました。
かつて九州の某運輸会社に勤務する運転手と会社との間で「茶髪」を理由とした解雇を巡る訴訟があり,「解雇権の濫用で無効」という決定が出されました(福岡地裁小倉支部,平成9年12月25日判決)。サービス業を営む企業にとっては,お客様に対して不快感を与えず,清潔感や品位を保つ身だしなみに非常に気を遣いますが,一方で,人権侵害という声も聞かれます。
今後さらにカラーリングする人が増えると予想されるため,医療機関においても一律に禁止するのではなく,医療機関の職員としてふさわしいカラー基準を設定すること,
また,その基準に従わない職員に対しては,設定した理由や医療機関の特性を十分説明し,理解を求める必要があります。
確かに,髪の色が少し明るくなっただけで印象も性格も明るくなったという話を聞くことはあります。そうしたプラス面を強調する人もいるでしょう。ただ,強いカラーリングは,患者や同僚職員に対して違和感,軽薄な印象を与え,清潔感がありません。
要は,医療人としてプロの自覚があれば,自ずと結果は身だしなみに現れるということでしょう。
参考
日本ヘアカラー協会が染め上がった毛髪の明るさを示すためにつくった統一基準で,「1」(真っ黒)~「20」(真っ白)まで設定しています。このうち日本人の髪に合うのは,「5」(濃い焦げ茶)から「15」(金髪)までと言われており,同協会による一般企業向けの推奨レベルは「6」~「8」となっています。
編者: 大江和郎(東京女子医科大学附属成人医学センター 元事務長)
提供/発行所: 日本医事新報社
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