もつれない患者との会話術
ポイント
患者から「診療拒否!」とクレームをつけられると,心穏やかなはずがありません。しかし,そもそも診療契約は,“患者の「診てください」+医療機関の「診ましょう」”で成立しますので,状況判断がまず大切です。このようなケースでは診療契約は成立しておらず,診療拒否には当たらないことを理解しておきます。
ただ,医療機関側に瑕疵がない場合でも,できる限り次善の策を提示するなど,患者側の要望に応える姿勢を示すとよいでしょう。そうすることで患者を落ちつく方向に誘導し,冷静に状況判断をし,次の行動の選択肢を検討します。
解説
このケースの対応としては,まず,今日はA医師の診察は無理ではあるもののB医師の診察は可能であることを説明し,その上で,そう手配するかどうか,患者の意思を確認します。
そして,患者が「どうしてもA医師でなければ嫌」ということであれば,別の日に予約を取ってもらうしかありません。
人気のある医師の予約は取りにくいものですが,このケースのような診療前の段階というのは,診療契約締結前のやり取りであり,診療拒否には該当しないのです。
患者は何かにつけて「診療拒否」を口にしますが,診療契約というのは,患者の「診てください」+医療機関の「診ましょう」という合意で成立するのです。具体的には,診察申込書に記入し,それを医療機関が受理した段階で契約が成立すると言われており,その前の段階では契約そのものが成立していません。
目の前で患者から「診療拒否!」とクレームをつけられると,心穏やかではないでしょうが,窓口において状況をしっかり把握した上で冷静に対処することが,トラブル回避,クレームの沈静化につながります。
医療機関の対応
ホームページや掲示版の診療担当表を用いてB医師の代診を周知・案内するなどして,来院した患者の便宜を図ることも大切な業務の1つです。
ただし,急な休診などに対して,ホームページや診療担当表の更新が困難な場合,あらかじめ注意事項として「突然の休診などもあることから来院時,電話でご確認の上,ご来院ください」などの文言を付け加えておいたほうがよいかと思います。