もつれない患者との会話術
ポイント
まず,ホームページを更新しなかったことについては謝罪しなければなりません。最近は受診前にインターネットで検索してから来院する患者も多くなってきており,ホームページを公開している医療機関であれば,新着情報の更新は必須と考えなければなりません。
ただし,人間のやることですから,ついうっかりというミスはつきものであり,強硬に責め立てられても致し方ない場合もあります。
このケースのように,代診医を勧めるなどして,誠意を示しましょう。
解説
仮に代診医もおらず,患者に無駄足を運ばせた場合,電車賃を執拗に求められる場合もありますので,ホームページの更新には十分留意しましょう。
しかし,本来,ホームページは「当院ではこのような医師が診療を担当していますよ」と知らせる意味合いの広告的要素のものであり,決して強硬に責め立てられる筋合いのものではないのです。ホームページのない時代には雑誌や入り口の看板,駅の広告板,電柱の張り紙等々で紹介していたものがインターネットで表示されるよう切り替わってきたと考えることができます。
そもそも診療契約は,患者の「診てもらいたい」という申し込みに対して医師の「診ましょう」という承諾で成立します。具体的には,初診受付で患者が申込書に記入し,医療機関がそれを受理することにより診療契約が成立すると考えられています。したがって,このケースのように,「ホームページ上で確認して来院した」と言っても,診療契約の成立前の段階であり,「虚偽記載呼ばわり」されることは心外と言わざるをえません。
医療機関の対応
今回のケースのようなことを生じさせないためには,ホームページの診療担当表に「お断り」として次のようなコメントを書き添えておくのも一法と思われます。
「学会や出張により担当医が休診または代診となる場合もありますことをご了承ください」
今の時代,説明していないことや書いていないことに対して執拗に攻めまくる方がなんと多いことか。だからこそ,指摘される前に予防を講じることが大事なのです。
●増加するインターネット検索による医療機関選び
総務省の平成28年版情報通信白書によると日本でインターネットを利用している人の数は2015年末には1億46万人,普及率は83.0%と,国民の約10人に8人の人たちが利用していることになります。
10年前に比べて利用者数は1,517万人,普及率は13ポイント増加しています。患者が病院を選ぶにあたって参考にしたものとして「インターネット」と言う人も年々増加しています。
このように,利用率が高くなってきているインターネットは,医療法による広告規制は受けないものの,厚生労働省はホームページのガイドライン〔「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」(平成24年9月28日付医政発0928第1号通知)〕を作成し,適切な運用を求めています。また,日本医師会や自治体でもガイドラインを作成しています。
これらのガイドラインでは,利用者に誤解を与えるような表現は避けること,そして外来診療スケジュールに変更があった場合は,すぐに修正するなどしてその医療機関の最新情報を提供するように努めることなど,客観的で正確な情報提供が行われることを求めています。
参考
医療法第6条の5などでいう「広告」は,厚生労働省の「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)」(平成20年11月4日付医政発第0401040号通知)により,具体的には以下の3要件を満たす場合に,広告に該当するものと判断されている。
- ①患者の受診等を誘因する意図があること(誘因性)
- ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
- ③一般人が認知できる状態にあること(認知性)