もつれない患者との会話術
ポイント
診断書は「ある時点において診断したときの状態(症状)に関する内容を証明する文書」であり,提出日の直近が一番望ましいことになります。どのくらいまでさかのぼって有効とするかは受け入れる側の裁量に委ねられていますが,一般的には3カ月以内の診断書を有効としているところが多いようです。
解説
診断書の定義としては,「医師が診察の結果に関する判断を表示して人の健康上の状態を証明するために作成する文書を指す」(大審院大正6年3月14日判決 刑録第23輯179頁)が基本的なものとされています。ただし,診断書の記載内容については,死亡診断書や出生証明書のように記載事項と記載様式が法定されているものを除き,具体的に規定されていません。したがって,一般に使用される診断書の内容に関しては全面的に医師の裁量に委ねられています。
一般に医師が診断書で記載するのは,患者の「主訴」ならびに診察や諸検査結果に基づく「病状」です。故に,患者側からすると,満足すべきものとなっていないケースが多いと言えます。一方,医師からみても,十分なものを常に作成できているわけではないのは確かです。
毎年1回実施している健康診断において,前回に比べて血圧が上がったり,血糖値が高くなったり,肝機能のデータが悪くなったりという結果に一喜一憂したことは多くの人が経験済みと思います。換言するなら,状態が変化しているからこそ,健康診断は1年間という間を空けているのです。したがって,1年前の診断書が有効であるという企業や学校はないと考えられますし,相当期間経過している診断書はまず使えないと考えてよいでしょう。
医師の作成する診断書は,その時の状態(症状)を証明するのにすぎないのであって,将来も同じ状態であることを保証するものではありません。利用する側が目的に応じて,自己の良識に基づいて判断することになります。ということは,利用する側の裁量で診断書の有効期間も決定されるということです。
医療機関の対応
診断書の用途は実に多様で,かつ目的に応じた様式も数多くあります。窓口でも「今日,作成していただいた診断書は,いつ頃まで有効なのか」とか「以前の診断書を就職先に提出したいが,期間的に問題はないか」などの質問を受けることがあります。
企業や学校によっては,所定の診断書様式を用いて「提出日から○カ月以内のもの」を提出する旨を明記している場合がありますが,診断書の性格から考えると,一般的には3カ月以内のものが有効と言えるかもしれません。