もつれない患者との会話術
ポイント
医師法第20条により,医師が直接診断しなければ診断書は交付できません。どうしても必要な場合は証明書を交付することになります。
診察した医師が不在なのに再交付に応じた場合は,当該医療機関は同条違反となります。
解説
●診断書の交付が困難な場合は証明書の交付も
診断書とは,「医師が診察の結果に関する診断を表示して人の健康上の状態を証明するために作成する文書」(大審院大正6年3月14日判決 刑録第23輯179頁)です。また,死亡診断書は,生前診療中の患者の死亡の事実を医学的に証明したものです。したがって,患者を直接診察したことがない医師では診断書を作成できません(医師法第20条)。
現実には,担当医が既に退職してしまっているとか,長期の海外出張や研修中であるとか,大学病院からの派遣医師で期間満了となったために帰局してしまったとか,場合によっては当時の医師が死亡してしまったなどの理由で再交付が困難な場合がいろいろあります。
とは言え,患者にとって診断書は必要なものであり,交付されなければ日常生活にも支障を来しかねないことも考えられます。このように,診断書の再交付が困難な場合は,診断書の控えを複写して「写しである」ことを奥書して交付するか,控えがなければカルテから書き出して「証明書」として交付します。なお,出生証明書や死産証書などの胎児については,いずれの文書も助産師が作成できる点で他の診断書と異なります(保健師助産師看護師法第40条)。
医療機関の対応
医療機関によっては,毎日あるいは週単位で書類作成担当医師というものを配置し,依頼された診断書等の作成を行っているところもあると聞きます。また,診察した医師が不在でも再交付に応じている医療機関もあるとのこと。しかし,これらは医師法第20条違反となり,許されることではありません。
どうしても再交付に応じなければならない状況にある場合は,証明書という形で交付することを心がけることです。
関係法令など
医師は,自ら診察しないで治療をし,若しくは診断書若しくは処方せんを交付し,自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し,又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し,診察中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については,この限りでない。
次の各号のいずれかに該当する者は,50万円以下の罰金に処する。
- 1.第6条第3項,第18条,第20条から第22条まで又は第24条の規定に違反した者
2~3は略
- 保健師助産師看護師法第40条(証明書等の交付に関する制限)
助産師は,自ら分べんの介助又は死胎の検案をしないで,出生証明書,死産証書又は死胎検案書を交付してはならない。