もつれない患者との会話術
ポイント
待ち時間が長引きはじめ,クレームが起こりはじめると,担当者は待っていただくよう丁寧にお願いするしかありません。また,予約時間はおおよその目安に過ぎないことを説明します。頻繁に待ち時間を聞かれる場合は,見込まれる待ち時間や待っている患者数を教えてあげるとよいでしょう。ただし,急いでいるからといって,順番を繰り上げるようなことをすべきではありません。
解説
●このケースでは損害賠償請求に応じる必要はない
結論から言えば,このケースのような場合,損害賠償請求に応じる必要はありません。
なぜなら,①予約時間の遅れによる診察が予想できたこと,②患者も打ち合わせ時間に遅れそうな場合には事前に連絡を入れることが可能であり,場合によっては改めて日程調整を図るか,打ち合わせ時間を多少ずらすなり,対応が可能と思われること,③さらに本当に大事な商談であれば,多少の遅れでキャンセルとなるのは考えにくいことなどが主な理由です。
また,仮に予約時間の遅れにより商談がキャンセルされたと主張するのであれば,それを証明してもらう必要があります。その証明には先方のお客様まで巻き込んで裁判することにもなりかねませんが,そうなると,結果的に先方のお客様に迷惑をかけることになり,そこまでやって医療機関に損害賠償を求めるメリットが本当にあるのかと思われます。医療機関に責任を求めるのは,少し短絡的な考え方と言わざるをえません。
●診療の遅れへの苦情には待っていただくようお願いするしかない
最近,待ち時間を少しでも解消しようとする工夫の1つが予約診察です。ただ,患者の中には,仕事の合間を縫って来院するビジネスマンもおり,仕事を気にしながら順番を待っている様子がうかがわれるときもあります。診察の遅れが生じはじめると次から次へと患者から苦情や問い合わせがあり,窓口担当者としては,その都度待っていただくよう丁重にお願いするしかありません。
医療機関の対応
個々の患者の症状は異なり,診察時間枠内で必ずしも終了するとは限りません。予約制を導入している医療機関は患者に対して,予約時間は診察のおおよその目安に過ぎず,「予約時間=診察時間」を保証するものでは決してないことを説明する必要があります。
頻繁に窓口に順番を訪ねてくるような患者に対しては,待ち時間の見込みや待っている患者数など教えてあげましょう。その先は患者が考えることであり,その患者が急いでいるからといって順番を繰り上げるようなことはすべきではありません。ただし,予約料を徴収する選定療養に係る診察の場合,規定に照らした対応が求められるのは言うまでもないことです。