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症例報告 185 [主訴: 躯幹四肢の瘙痒を伴う紅斑・水疱]

<症例> 70歳代、女性
<主訴> 躯幹四肢の瘙痒を伴う紅斑・水疱
<既往歴> 神経梅毒・2型糖尿病・パーキンソン病・認知症・頚椎症
<家族歴> 特記すべきことなし
(症例提供) 高松赤十字病院 皮膚科 部長 濱田 利久 先生
(監修) 高松赤十字病院 皮膚科 部長 濱田 利久 先生

解答と解説

診断名

  • 疱疹状天疱瘡

鑑別診断

  • DPP4阻害薬関連類天疱瘡・線状IgA水疱性皮膚症・ジューリング疱疹状皮膚炎

検査、原因、治療法

  • 側腹部より皮膚生検を施行。表皮内に多数の好酸球が浸潤し海綿状態を伴っており、「好酸球性海綿状態」の像を呈していた(図2)。蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgG, C3が沈着し、基底膜部にはIgA含めて免疫物質の沈着はみとめなかった(図3)。血清学的に抗BP180抗体陰性、抗デスモグレイン1抗体 257.2U/mL、抗デスモグレイン3抗体陰性。以上より疱疹状天疱瘡と診断した。

    疱疹状天疱瘡は、血清学的には天疱瘡で、抗デスモグレイン抗体を持ち、抗デスモグレイン1抗体陽性の頻度が高い。臨床像は古典的な天疱瘡と異なり、線状IgA水疱性皮膚症やジューリング疱疹状皮膚炎を思わせる、辺縁に環状に配列する水疱を伴った浮腫性紅斑や局面が典型。自験例でもこのような臨床像であった。病理組織学的に、表皮内に多数の好酸球浸潤と表皮細胞間浮腫(好酸球性海綿状態)をみとめることも特徴として挙げられる。また近年の解析で、抗デスモコリン抗体を持つ症例も多数報告されているが、自験例ではみとめかった(久留米大学皮膚科に依頼して施行していただいた)。自験例はDPP4阻害薬開始後に発症したが、われわれが調べえた限りで、両者の関連性を報告した研究や報告はなかった。天疱瘡の診療ガイドライン1) では、初期治療はプレドニゾロンが第一選択薬となっているが、効果が不十分な場合は、免疫抑制療法、高ガンマグロブリン療法、血漿交換療法、ステロイドパルス療法等を考慮する。これまでの報告から疱疹状天疱瘡は初期治療に反応しやすく、古典型の天疱瘡に比較して予後良好とされている。自験例は治療開始後に合併症の糖尿病が増悪し、他のDPP4阻害薬を使用したが、疱疹状天疱瘡の再燃はみられない。以上より、DPP4阻害薬と疱疹状天疱瘡の関連性は否定的と考えている。しかし、その発症の契機となった可能性は否定できない。

    出典
    1) 天谷 雅行ほか : 日皮会誌. 2010; 120(7): 1443-1460


    図2:皮膚病理組織像(HE染色)
    図2:皮膚病理組織像(HE染色)
    好酸球が表皮内に多数浸潤し、好酸球性海綿状態を形成。表皮内水疱も見られる。
    図3:蛍光抗体直接法
    図3:蛍光抗体直接法
    表皮細胞間にIgGの沈着をみとめた。

 

 

皮膚科領域

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