皮膚所見クイズ
症例報告 181 [主訴: 右上腕の皮疹]
<症例> | 7歳、男性 |
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<主訴> | 右上腕の皮疹 |
<既往歴> | 特記すべきことなし |
<家族歴> | 祖父:関節リウマチ、祖母:リウマチの検査で異常指摘 |
(症例提供) | 東京大学医学部附属病院皮膚科 講師 管 析 先生 |
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(監修) | 東京大学医学部附属病院皮膚科 准教授 浅野 善英 先生 |
解答と解説
診断名
- Linear childhood DLE
鑑別診断
- 1. 線状苔癬
2. 炎症性線状疣贅状表皮母斑(ILVEN)
3. 線状強皮症
検査、原因、治療法
- 診断のため右上腕より生検施行。表皮は軽度萎縮し、毛孔には角栓を伴っていた。真皮中層から深層では付属器周囲にリンパ球を主体とした細胞浸潤が見られた(図2)。また、軽度液状変性も認めた(図3)。アルシアンブルー染色では真皮全層に渡り青く染まり、ムチンの沈着があると考えられた(図4)。血液検査では抗一本鎖DNA抗体が12.2 U/mLと高値。血算は異常なく、補体も正常、抗核抗体やその他の自己抗体も検索し得た範囲では陰性であった。以上の所見からlinear childhood DLEと診断した。
本症は液状変性を主体とした病変がBlaschko線に沿って分布することから、遺伝的モザイクにより形質変化を起こした表皮角化細胞と、遺伝要因と環境要因を背景にLEに関連した形質変化を起こした免疫担当細胞の異常なクロストークにより発症すると推測される。自験例も膠原病の家族歴があり、抗一本鎖DNA抗体が陽性であった。通常のDLEと同様に、SLEの一症状として出てくる場合もあるので注意が必要である。治療も通常のDLEに準じて行う。自験例は遮光を指導して経過をみているが、診断後1年半の経過中に皮疹の増数・拡大はなく、全身症状もない。