ノバルティス ファーマの医療関係者向けサイト

症例報告 177 [主訴: 右肩部の多発性小水疱]

<症例> 75歳、女性
<主訴> 右肩部の多発性小水疱
<既往歴> 高血圧症
<家族歴> 特記すべきことなし
(症例提供) 関東労災病院 皮膚科 部長 足立 真 先生
(監修) 関東労災病院 皮膚科 部長 足立 真 先生

解答と解説

診断名

  • 後天性リンパ管腫

鑑別診断

  • 局所に水疱を呈する疾患として頻度の多い疾患は虫刺症、湿布薬による接触皮膚炎である。これらの疾患はステロイド軟膏外用1週間で通常は治癒する。

検査、原因、治療法

  • 診断のため右肩部水疱部を皮膚生検した。

    HE染色では真皮浅層~深層にかけての間質の浮腫と真皮内を主体として拡張・軽度蛇行を示す管腔構造の増生を認めた。管腔壁は菲薄で1層の内皮細胞で構成されており、 内腔に少量の液体貯留が散見された(図3)。免疫染色では拡張した管腔壁でリンパ管内皮細胞マーカーD2―40が陽性、FactorⅧは陰性であった(図4)。


    図3 真皮内に一層の内皮細胞からなる拡張した管腔構造を認める
    図3 真皮内に一層の内皮細胞からなる拡張した管腔構造を認める
    図4 リンパ管内皮細胞マーカーD2-40が管腔壁に陽性
    図4 リンパ管内皮細胞マーカーD2-40が管腔壁に陽性
    後天性リンパ管腫は、限局性リンパ管腫に酷似した皮疹が後天的に生じる疾患であり 、悪性腫瘍などの手術・放射線治療・外傷などによるリンパ管の通過障害によるリンパ流のうっ滞でリンパ管が肥厚・拡張することにより生じ、発症までの期間は通常10年以上である。自験例は生検後にリンパ流の流れが変わり3カ月後には周囲の皮疹も自然消退した(図5)が、数年にわたり再発を繰り返す症例も多い。


    図5 初診3カ月後の患部
    図5 初診3カ月後の患部

 

 

皮膚科領域

弊社医薬品へのお問い合わせ

MRもしくはノバルティスダイレクトへお問い合わせください。


ノバルティスダイレクト

電話番号 0120-003-293
(通話料無料)
受付時間 月〜金
9:00〜17:30
(祝日及び当社休日を除く)