皮膚所見クイズ
症例報告 175 [主訴: 顔面・背部の紅斑とびらん]
<症例> | 77歳、男性 |
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<主訴> | 顔面・背部の紅斑とびらん |
<既往歴> | 特記すべきことなし |
<家族歴> | 特記すべきことなし |
(症例提供) | 関東労災病院 皮膚科 部長 足立 真 先生 |
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(監修) | 関東労災病院 皮膚科 部長 足立 真 先生 |
解答と解説
診断名
- 落葉状天疱瘡
鑑別診断
- 頻度の多い疾患としては伝染性膿痂疹が鑑別に挙げられるが通常、手の届かない上背部には膿痂疹の発疹はない。落葉状天疱瘡の可能性を念頭に置き皮膚生検すれば容易に鑑別可能である。
検査、原因、治療法
- 診断のため背部の紅斑部より生検した。
表皮角層下から顆粒層に裂隙の形成を認め、裂隙部の拡大像では棘融解細胞を認めた。(図3)
蛍光抗体直接法ではIgGが表皮表層の細胞間に沈着していた(図4)さらに血液検査所見では、抗Dsg1抗体の上昇を認め落葉状天疱瘡と診断した。
落葉状天疱瘡の頻度は本邦では全天疱瘡の23%であり、40-60歳代に多いとされ、臨床像は薄い鱗屑、痂皮を伴った紅斑、弛緩性水疱、びらんで、頭部、顔面、背部、胸部などの脂漏部位に好発する1-3)。尋常性天疱瘡と異なり、抗Dsg1抗体のみ陽性であるため、表皮浅層(角層下・顆粒層)に裂隙を形成し、粘膜病変はほとんどみられない。
治療は尋常性天疱瘡同様、ステロイド全身投与が第一選択であるが、尋常性天疱瘡より経過が良好で1日20mg程度の低用量のステロイド全身投与でコントロールできる症例が多い4,5)。
【引用文献】
- 1) 皮膚科学 大塚 藤男 第10版 2016年 金芳堂
- 2) 天疱瘡診療ガイドライン 天谷 雅行 他 日皮会誌:120(7), 1443-1460, 2010
- 3) 天谷 雅行:臨床皮膚科 58: 84, 2004
- 4) 石川 明子, 他:臨床皮膚科 62 : 726-728, 2008
- 5) 竹中 基, 他:臨床皮膚科 56: 1128-1130, 2002