皮膚所見クイズ
症例報告 168 [主訴: 手の紅斑]
<症例> | 69歳、女性 |
---|---|
<主訴> | 手の紅斑 |
<既往歴> | 21歳、肺結核 |
<家族歴> | 特記すべきことなし |
(症例提供) | 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 皮膚科 副部長 古賀 玲子 先生 |
---|---|
(監修) | 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 皮膚科 主任部長 吉川 義顕 先生 |
解答と解説
診断名
- 皮膚筋炎
鑑別診断
- 主婦湿疹
検査、原因、治療法
- 手指関節部屈側に鉄棒まめ様皮疹(いわゆる逆Gottron兆候)がみられる(図1)。また、手背部(図2)や、診察時に確認すると肘頭部(図3)など関節背面にGottron兆候があることから皮膚筋炎が鑑別に挙がる。本症例では皮膚生検は実施していないが、病理組織では表皮萎縮、基底膜の液状変性、ムチン沈着などがみられ、主婦湿疹と鑑別される。抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体、抗Mi-2抗体を検索したところ、抗MDA5抗体index値 173(正常値32未満)で陽性であった。皮膚症状、筋原性酵素の上昇(CK407(正常値41-153U/L))、関節痛、全身性炎症所見(CRP4.21(正常値0-0.14mg/dL))より皮膚筋炎と診断した。胸部CTで間質性肺炎像があり多剤併用免疫抑制療法が開始されたが、間質性肺炎の悪化のため初診の3ヶ月後に永眠された。抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎では急速進行性間質性肺炎を合併する頻度が高く、きわめて予後が悪いのが特徴である。筋症状は通常ないか軽微であるので、皮膚症状から皮膚筋炎を疑って早期に診断をつけ、間質性肺炎の検索を行い、合併する場合には内科と連携して速やかに治療介入を行う必要性がある。