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症例報告 166 [主訴: 足底の色素斑]

<症例> 5歳、男児
<主訴> 足底の色素斑
<既往歴> 特記すべきことなし
<家族歴> 特記すべきことなし
(症例提供) 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 皮膚科 主任部長 吉川 義顕 先生
(監修) 公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 皮膚科 主任部長 吉川 義顕 先生

解答と解説

診断名

  • カメムシが原因の色素斑

鑑別診断

  • ダーモスコピー所見でparallel ridge patternを示す疾患として、悪性黒色腫、Peutz-Jeghers症候群、Laugier-Hunziker-Baran症候群、抗がん剤による色素斑などが鑑別に挙がる。
    臨床所見からは、血腫なども鑑別疾患として考えられる。

検査、原因、治療法

  • 自験例では、1ヵ月後の再診時には色素斑は自然消退していた(図2)。
    ダーモスコピー所見からは血腫は否定的であり、その他に鑑別に挙げた疾患は、どれも短期間での自然消退は考えにくい。
    ダーモスコピー所見に加え、色素斑が橙褐色調であったこと、同時期に2ヵ所の色素斑が生じていたこと、春に発症し短期間で自然消退したことなどを考え合わせると、カメムシによる色素斑の可能性が最も高いと推察した。

    カメムシは、胸部腹面にある臭腺から皮膚刺激性を有するアルデヒド類を含む分泌物質を放出する。そのため、通常のカメムシ皮膚炎では皮膚の炎症や刺激感が出現するが、足底の場合にはアルデヒドが真皮まで至らず厚い角層内に留まるために、炎症を起こさず色素沈着のみを生じると考えられている。色素沈着の原因は主にヘキセナールなどの不飽和アルデヒドである。カメムシ皮膚炎の特徴は、①カメムシが活動的になる春、秋に好発する、②カメムシとの接触時に刺激感や痛みを伴うことがある、③接触後に黄褐色の色素沈着を伴うことがある、④病変の大きさは2㎝以内であることが多い、⑤皮膚炎の経過は比較的長く、潰瘍を形成することがある、とされている。足底に色素斑を生じた場合には、足底の角層のターンオーバーが約16日であるため、その頃には自然消退する。
    カメムシが原因の色素斑と診断した症例をもう1例提示する(図3-a:臨床写真、図3-b:ダーモスコピー所見)。この症例においても、1ヵ月後の再診時には色素斑は自然消退していた。
    足底に色素斑をみた際には、カメムシが原因である可能性も鑑別に挙げ検討すべきである。
    (参考文献:皮膚臨床58(4); 609-612, 2016、 臨皮68(11); 851-856, 2014)


    図2
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    図3
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皮膚科領域

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