皮膚所見クイズ
症例報告 160 [両側第4趾爪甲の変形]
<症例> | 6カ月、男児 |
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<主訴> | 両側第4趾爪甲の変形 |
<既往歴> | 特記すべきことなし |
<家族歴> | 両親、姉、兄に同症なし |
(症例提供) | 山形大学 医学部 皮膚科学講座 講師 紺野 隆之 先生 |
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(監修) | 山形大学 医学部 皮膚科学講座 教授 鈴木 民夫 先生 |
解答と解説
診断名
- 先天性第4趾爪甲前方彎曲症
鑑別診断
- 同様に出生時に爪の変形を認める疾患にcongenital claw-like fingers and toesがあるが、両側第4趾以外にも病変を認めることで鑑別できる。また、後天性の疾患で、外傷性鉤爪、ヒポクラテス爪があるが、外傷の既往や基礎疾患の有無が鑑別点になる。
検査、原因、治療法
- 病変部の単純Xp写真で、第4趾末節骨の低形成や関節融合の所見を認める。自験例でも両側第4趾末節骨の低形成を認めた(図2)。骨病変が本態で、爪の彎曲は二次的な変化とも考えられている。報告例の約半数で家族歴があり、遺伝性疾患の可能性が示唆されている。発症は出生時で、ほとんどの例が両側の第4趾の爪に彎曲を認める。多くは無症候性で、見た目が気になる、爪が切りにくいなどで受診することが多いが、爪が先端皮膚に食い込んで痛い、スポーツを始めたら痛みだしたなど疼痛を伴うこともある。彎曲した爪の白濁や、趾の先端の角化を呈する例や、口唇口蓋裂、母指多指症を合併した例の報告もある。診断基準として1)第4趾のみの病変で、他の指趾は正常、2)末節骨の低形成を認めるが、関節の可動域制限は伴わない、3)他の外胚葉由来器官の奇形を合併しない、が提唱されている。
治療は、皮膚に爪が食い込んで疼痛が出現する前に爪を切るように指導する。また、先端の曲がった爪を切り、趾腹側からV-Y皮弁を持ち上げる手術を行って良好な成績であったとの報告がある。