皮膚所見クイズ
症例報告 152 [主訴: 頚部の多発性白色結節]
<症例> | 46歳 女性 |
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<主訴> | 頚部の多発性白色結節 |
<家族歴> | 父 糖尿病 |
<既往歴> | アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎 |
(症例提供) | 社会福祉法人聖母会 聖母病院 皮膚科 医長 冨永 奈津子 先生 |
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(監修) | 社会福祉法人聖母会 聖母病院 皮膚科 部長 小林 里実 先生 |
解答と解説
A1.診断名
- White fibrous papulosis of the neck(WFPN)
A2.鑑別診断
- 稗粒種、伝染性軟属腫、アクロコルドン、eruptive vellus hair cysts、斑状皮膚萎縮症、皮膚石灰沈着症、pseudoxanthoma elusticum-like papillary dermalelastolysis (PXE-PDE)
A3.検査、原因、治療
臨床所見より上記鑑別疾患の可能性を考え、そのうち1個を試験穿刺するも内容物の排出はなく、稗粒種や伝染性軟属腫は否定した。摘出生検の病理組織学的所見では、真皮の上中層に膠原線維束の増生と粗大化を認めた(写真2)。elastica van Gieson染色では、膠原線維束の増生部で弾性線維の減少がみられた(写真3)。以上の臨床および病理所見よりWFPNと診断した。無治療で経過観察している。
WFPNは中高齢者の頚部に多発する白色結節ないし丘疹で、加齢に伴う皮膚変化のひとつとして、1985年に清水ら1)により初めて国内で報告された疾患である。本症の発症機序として、生理的老化に伴う膠原線維の構造変化が本態と考えられている1)が、治療経過の長いアトピー性皮膚炎患者では30~40歳代の若年者にみられることがあり2)、長期ステロイド外用、繰り返される掻破、あるいは炎症そのものにより膠原線維の構造変化が誘発される可能性が推測されている。膠原線維束の増生部ではしばしば弾性線維の減少がみられ、病理組織学的に類似するPXE-PDEや、これらを包括したfibroelastlytic papulosisとの関係が議論されている3)が、臨床学的特徴からWFPNとした。経過観察か、時にレーザー治療が行われる。
<文献>
1.清水 宏ほか.日皮会誌 1985;95:1077-84
2.浅井俊弥ほか.皮膚病診療 2012;34:61-4
3.Balus L, et al.Br J Dermatol 1997;137:461-6