皮膚所見クイズ
症例報告 150 [主訴: 左手掌拇指球部の紅斑局面]
<症例> | 65歳、女性 |
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<主訴> | 左手掌拇指球部の紅斑局面 |
<家族歴> | 特記すべき事項なし |
<既往歴> | 特記すべき事項なし |
(症例提供) | 鳥取大学 感覚運動医学講座皮膚病態学分野 助教 谷 直実 先生 |
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(監修) | 鳥取大学 感覚運動医学講座皮膚病態学分野 教授 山元 修 先生 |
解答と解説
A1.診断名
- Circumscribed palmar hypokeratosis(限局性手掌低角化症)
A2.鑑別診断
- 汗孔角化症、Bowen病、手白癬、Pitted keratolysis
A3.検査、原因、治療
左手掌拇指球部に12mm大の境界明瞭な楕円形の軽度陥凹した紅色局面を認める(図2)。ダーモスコピーではdotted vesselsを認める(図3)。病理組織では病変の辺縁部では角層は病変中央に向かい階段状に急激に落ち込むいわゆるstair-like appearanceを認めた(図4)。典型的な臨床所見、病理所見よりcircumscribed palmar hypokeratosis (限局性手掌低角化症) (以下CPH)と診断した。ダーモスコピーでのdotted vesselsは角層の菲薄化のため透見された真皮乳頭層の毛細血管を反映すると考えられる。CPHは2002年にPeretzらによって提唱された概念で自覚症状のない境界明瞭な表面陥凹した類円形の紅色局面を手掌もしくは足底に認める。中高年女性に好発し、ほとんどが単発例である。治療はステロイド外用に反応しないという報告が多い。液体窒素療法で治癒した症例や外科的に切除を行い再発がみられなかったという報告があるが治療法の確立はされていない。
図4