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症例報告 140 [主訴:体幹の紅斑、膿疱]

<症例> 88歳、女性
<主訴> 体幹の紅斑、膿疱
<家族歴> 特記すべきことなし
<既往歴> 高血圧、気管支喘息
(症例提供) 奈良県立医科大学 皮膚科学教室 講師 宮川 史 先生
(監修) 奈良県立医科大学 皮膚科学教室 教授 浅田 秀夫 先生

解答と解説

A1.診断名

角層下膿疱症

A2.鑑別診断

  • IgA天疱瘡
  • ジューリング疱疹状皮膚炎
  • 落葉状天疱瘡
  • 膿疱性乾癬
  • カンジダ症
  • 伝染性膿痂疹
  • 急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)

A3.検査、原因、治療

腹部の膿疱を生検した。病理組織学的には、好中球を含む角層下膿疱がみられ、真皮浅層には好中球やリンパ球などの炎症細胞浸潤を認めた(図3、4)。蛍光抗体直接法は陰性であった。血液検査、尿検査に特に異常所見は認めなかった。
角層下膿疱症は1956年にSneddonとWilkinsonにより初めて報告され、Sneddon-Wilkinson diseaseとも呼ばれる。40歳以上の女性に好発し、腋窩、鼠径部、乳房下、腹部、四肢屈側に、左右対称性に浅い膿疱、紅斑が環状〜蛇行状配列を示す(図1)。膿は膿疱の下半分に貯留するのが特徴で(図2)、無菌性である。膿疱は乾燥して襟飾り様の落屑となる。顔面、粘膜は侵されない。増悪と寛解を繰り返し慢性に経過する。多くの症例では原因は不明であるが、時に壊疽性膿皮症、良性単クローン性IgA免疫グロブリン血症、IgA型骨髄腫等を合併する。治療は、DDSが第1選択とされている。エトレチナート、PUVA、ナローバンドUVB、ステロイド外用剤、活性型ビタミンD3外用剤が有効である場合もある。ステロイド内服はあまり有効ではない。本例ではDDS(25mg)1錠/日より開始したところ、皮疹は数週間で速やかに消失した。続いて1錠を隔日投与にしたところ、1ヶ月後に再燃がみられた。DDSを1錠/日に戻し、効果がないことより3錠/日まで漸増したが反応はみられなかった。そこでエトレチナート(10mg)3錠/日に切り替えたところ、徐々に軽快がみられ皮疹は消失した。エトレチナートは1錠/日まで漸減できた。その後老衰で死亡されたが、エトレチナートを投与した7ヶ月の間、最後まで皮疹の再燃はみられなかった。

写真1

症例写真1

写真2

症例写真2

写真3

症例写真3

写真4

症例写真4

皮膚科領域

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