疾患活動性の指標となるNEDA

NEDAは、MSの疾患活動性を評価する複合的な評価指標ですが、DMD治療においては治療効果の包括的な指標となっています。MSの治療ゴールとしてNEDAを達成した患者の割合が評価されることもあります¹⁾。

NEDA-3は、再発、障害進行（3ヵ月以上持続するEDSSの悪化）、MRI活動性（新規T2病変の出現もしくは病変拡大）のいずれもが認められない状態と定義され、NEDA-4はそれに脳萎縮の進行（年間0.4%以上の脳容積の変化）が加わります（図1）^2）。

NEDA-3は、局所的な炎症性の活動性に重点を置いており、びまん性障害や神経変性などの病態が考慮されていないという課題があり、NEDA-3に脳萎縮の進行を追加したNEDA-4が提唱されました。

ガイドライン2023年版に掲載されたNEDAの説明には「MSの活動性の指標の1つで、NEDA-4がよく用いられる」^1）とあります。NEDA-4の指標が浸透するとともに、臨床的な脳萎縮の程度を推定する目的で、MRI画像などで脳容積の変化を測定する機会が増えてくると思われます。

図1 MSの治療ゴールとなる包括的指標のNEDA-4

Kappos L et al： Mult Scler 22（10）： 1297-1305, 2016より作図
ノバルティスは、本研究に資金提供を行いました。
本論文の著者には、ノバルティスが、講演料、研究支援金、助成金、コンサルタント料、謝礼金、旅費、アドバイザリーボード料を支払った者や過去に
ノバルティスのアドバイザリーボード、コンサルタント等を務めた者が含まれています。
本論文の著者のうち、3名はノバルティスの社員です。

　COLUMN　 早期からの活動性予測を目指したNEDAの次の基準

病態生理学的な視点から将来の病態進行を見極めるため、NEDAの次の基準として挙がっているのが図2右にあるようなCSF（脳脊髄液）バイオマーカー軸です^3）。図2左のNEDA-4で示された縦の臨床軸と横のMRI軸に加えて、Bonnan Mらによって提案されたのがCSFバイオマーカー軸です。脳萎縮が起こる前から炎症および神経変性の程度が評価可能な血清中もしくはCSF中のNfL濃度等のバイオマーカー（神経変性バイオマーカー）と、異常な免疫活性化の評価が可能なオリゴクローナルバンド等のバイオマーカー（免疫活性化バイオマーカー）が候補となっています。

近年、最新のDMD治療で再発予防効果が得られるようになったことで、現在の治療を評価する指標だけではなく、将来の活動性の予測も視野に入れた研究が進められています。NEDA-4以降の基準を決めるためには、CSFバイオマーカーと疾患活動性の関連を長期にわたって検討する縦断的研究が求められています。

図2 疾患活動性の軸とCSFバイオマーカー軸 海外データ

Bonnan M et al：Mult Scler Relat Disord 11：51-55, 2017

MS：多発性硬化症、DMD：疾患修飾薬、EDSS：総合障害度スケール、NfL：ニューロフィラメント軽鎖、MBP：ミエリン塩基性蛋白、OCB：オリゴクローナルバンド、Ig：免疫グロブリン