製品について:
B細胞枯渇療法とケシンプタの作用機序
MS病態における「B細胞」の役割、ケシンプタ®の作用機序と投与経路
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作用機序
●CD20とは
オファツムマブ(ケシンプタ®)の標的分子であるCD20は、297アミノ酸からなる4回膜貫通型の蛋白質であり、細胞外に小ループ(約7アミノ酸)および大ループ(約44アミノ酸)を有し、その構造から、細胞内へのカルシウムイオンの流入や、細胞の活性化および増殖への関与が考えられています。
CD20は主としてB細胞膜に発現しており、分化過程のうち未熟段階であるプレB細胞から、成熟に至る過程全体で発現が認められていますが、形質細胞へと分化するとCD20の発現が認められなくなると考えられているほか、T細胞でも低レベルでCD20が発現していると考えられています。
●オファツムマブのCD20への特異的結合と、CD20陽性細胞に対する作用
オファツムマブは、ヒトCD20の細胞外小ループおよび大ループに特異的に結合し1)、補体依存性細胞傷害(CDC)活性および抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性により、CD20陽性B細胞およびCD20陽性T細胞を溶解すると考えられています2)、3)。初代培養ヒトB細胞の検討から、オファツムマブの細胞溶解作用は主としてCDC活性によるものであり、ADCC活性の程度は低かったことが報告されています(in vitro) 2) 。
CDC活性は一般的に、標的細胞の形質膜と抗体との距離がより近いほど高いといわれており4)、オファツムマブは細胞膜に近接してCD20の細胞外小ループまたは大ループに特異的に結合して、CDC活性を示すと考えられています1) 。
これによりオファツムマブは、末梢および中枢神経系(CNS)病巣において、自己反応性B細胞および自己反応性T細胞の免疫反応の抑制、そして炎症性脱髄の形成の抑制が期待されます。
オファツムマブの結合部位と主な作用イメージ図
1)Cheson BD:J Clin Oncol 28(21):3525-3530, 2010
2)社内資料:初代培養ヒトB細胞に対する溶解作用の検討(CTD2.6.2.2.3)
3)Teeling JL et al:J Immunol 177(1):362-371, 2006
4)Cleary KLS et al:J Immunol 198(10):3999-4011, 2017
参考
●補体依存性細胞傷害(CDC)とは
CDCは、補体系の活性化により惹起されます。抗体が標的細胞上の抗原に結合すると、補体成分が抗体の定常領域(Fc領域)に結合して補体系が活性化し、標的細胞膜上において補体系の最終産物である膜侵襲複合体が形成され、細胞膜に小孔が穿たれることで、標的細胞を溶解します。
CDC活性は一般的に、標的細胞の形質膜と抗体との距離がより近いほど高いといわれています4)。
●抗体依存性細胞傷害(ADCC)とは
ADCCは、ナチュラルキラー(NK)細胞をはじめとしたエフェクター細胞が関与しています。エフェクター細胞はFc受容体を介して、標的細胞に結合した抗体のFc領域に結合して活性化し、細胞傷害顆粒を標的細胞膜上で放出して、標的細胞を溶解します。
臨床薬理 B細胞数減少作用(多発性硬化症患者・成人)
海外第Ⅲ相検証試験〔ASCLEPIOSⅠ試験・ASCLEPIOSⅡ試験〕
【対象】 | 再発を伴う多発性硬化症患者1,882例(ASCLEPIOS I試験:927例、ASCLEPIOS II試験:955例) |
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【方法】 | ケシンプタ群では、ケシンプタ20mgを初回(1日目)、1週後、2週後、4週後、以降は4週毎に皮下投与し、teriflunomide(以降、テリフルノミド:本邦未承認薬)群では、テリフルノミド14mgを1日目から1日1回経口投与して、最長30ヵ月間追跡した。 |
社内資料:海外第III相試験(G2301試験)[承認時評価資料] 社内資料:海外第III相試験(G2302試験)[承認時評価資料]
ケシンプタ投与後のB細胞数は、ASCLEPIOS I試験では、投与2週後には95.0%(420/442例)の被験者で基準値下限(40cells/μL)未満となり、投与4週後の投与前には0(中央値)となりました。投与期間を通して、96%を超える被験者でB細胞の枯渇がみられました。
同様に、ASCLEPIOS II試験では、投与2週後には95.8%(438/457例)の被験者で基準値下限未満となり、投与4週後の投与前には0(中央値)となりました。投与期間を通して、95%を超える被験者でB細胞の枯渇がみられました。
B細胞数の推移〔海外第Ⅲ相検証試験〕 (安全性解析対象集団) 海外データ
社内資料:海外第III相試験(G2301試験)[承認時評価資料] 社内資料:海外第III相試験(G2302試験)[承認時評価資料]
臨床薬理 免疫グロブリン(IgG、IgM)濃度に及ぼす影響(多発性硬化症患者・成人) 参考情報
海外第Ⅲ相検証試験〔ASCLEPIOSⅠ試験・ASCLEPIOSⅡ試験〕
【対象】 | 再発を伴う多発性硬化症患者1,882例(ASCLEPIOS I試験:927例、ASCLEPIOS II試験:955例) |
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【方法】 | ケシンプタ群では、ケシンプタ20mgを初回(1日目)、1週後、2週後、4週後、以降は4週毎に皮下投与して、最長30ヵ月間追跡した。なお、免疫グロブリン濃度の評価については、2試験の安全性データを併合し、海外第III相併合データとして評価した。 |
社内資料:海外第III相試験(G2301試験)[承認時評価資料] 社内資料:海外第III相試験(G2302試験)[承認時評価資料]
●IgG濃度参考情報
ケシンプタ投与120週後までのIgG濃度(平均値)は、基準値範囲内でした。投与96週後までケシンプタ投与を完了した被験者における、投与96週後のIgG濃度(平均値)のベースラインからの変化量は、0.224g/L(2.2%増加)でした。
なお、治験実施計画書の休薬基準である「IgG濃度が基準値下限より20%低値」に該当した被験者の割合は、1.3%でした。
●IgM濃度参考情報
ケシンプタ投与120週後までのIgM濃度(平均値)は、基準値範囲内でした。投与96週後までケシンプタ投与を完了した被験者における、投与96週後のIgM濃度(平均値)のベースラインからの変化量は、−0.537g/L(38.8%減少)でした。
なお、治験実施計画書の休薬基準である「IgM濃度が基準値下限より10%低値」に該当した被験者の割合は、14.3%でした。
IgG濃度、IgM濃度の推移〔海外第III相併合データ〕(安全性解析対象集団) 海外データ
社内資料:海外第III相試験(G2301試験)[承認時評価資料] 社内資料:海外第III相試験(G2302試験)[承認時評価資料]
8. | 重要な基本的注意(抜粋) |
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8.2 | 本剤投与により免疫グロブリン濃度の低下、並びに白血球、好中球及びリンパ球の減少があらわれ、これに伴い感染症が生じる又は悪化するおそれがある。本剤の治療期間中及び治療終了後は定期的に血液検査を行うなど患者の状態を十分に観察すること。また、感染症の自他覚症状に注意し、異常が認められた場合には、速やかに医療機関に相談するよう患者に指導すること。[9.1.2、11.1.1参照] |