PMFの予後予測モデル
PMFの予後を予測する方法としてIPSS、DIPSS、DIPSS-plusなどが挙げられます。これらの予後予測モデルでは、年齢や症状、検査値などから点数をつけ、合計点でリスク分類を行います。いずれの分類も、日本人PMF患者をhigher risk群とlower risk群の2群に層別化することができ、DIPSS-plusの場合は、予後を4群に層別できます。
DIPSS-plusを用いた予後予測
では、最初に提示した患者について、DIPSS-plusで予後予測してみましょう。
66歳 男性
- 体重減少が持続している
- 赤血球輸血は実施していない
- 予後不良染色体なし
Blast | 0% |
WBC | 30,000/μL |
Hb | 14g/dL |
PLT | 33×104/μL |
以下の該当する項目にチェックしてください。
算出方法
リスク分類
DIPSS-plusでの予後予測を行うには、まずDIPSSを用いたリスク分類を行います。DIPSSでは、年齢、症状、Hb、WBC、Blastに関する予後不良因子について、表のように点数化されています。合計点が0ポイントで低リスク、1-2ポイントで中間-Ⅰリスク、3-4ポイントで中間-Ⅱリスク、5-6ポイント以上で高リスクとなります。
DIPSS-plusでは、このDIPSSのリスク分類をそれぞれ0ポイント、1ポイント、2ポイント、3ポイントに換算し、さらにPLT、赤血球輸血依存、予後不良染色体に関する点数を追加します。
予後不良染色体の情報がない場合は0ポイントとして算出します。DIPSS-plusでは、合計点が0ポイントで低リスク、1ポイントで中間-Ⅰリスク、2-3ポイントで中間-Ⅱリスク、4ポイント以上で高リスクとなります。
今回の患者は65歳を超えており、体重減少の持続がみられ、WBCが25,000/μL以上であることから、DIPSSで評価すると中間-Ⅱリスク(2ポイント)となります。また、DIPSS-plusにおけるPLT、赤血球輸血依存、予後不良染色体に関する項目はすべてあてはまらない(0ポイント)ため、合計2ポイントとなり、DIPSS-plusでも中間-Ⅱリスクに分類されます。
予後
日本人においては、DIPSS-plusで低リスクの生存期間中央値が18.6年、中間-Ⅰリスクが10.7年、中間-Ⅱリスクが3.7年、高リスクが2.2年と報告されています。
今回の患者はDIPSS-plusで中間-Ⅱリスクのため、予測される生存期間中央値は3.7年です。
先生の予想と比べて、いかがだったでしょうか。
今回の患者は、中間-Ⅱリスクでしたが、予後不良とされる高リスク、中間-Ⅱリスクの患者はどの程度いらっしゃると思いますか?
DIPSS-plusで高リスク、中間-Ⅱリスクの患者は、日本人において全患者の75%、4人に3人が該当しました。
先生が診ているPMF患者の中にも、高リスク、中間-Ⅱリスクの患者がいらっしゃるかもしれません。
思い浮かぶ患者がいらっしゃいましたら、今後の治療方針の検討にお役立ていただくために、ご紹介したリスク分類をご活用いただけますと幸いです。
ルキソリチニブの有効性
造血器腫瘍ガイドラインでは、高リスク、中間-Ⅱリスクの患者で移植不適応な場合には「輸血・ルキソリチニブ」が推奨されています。
「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。
ルキソリチニブの海外第Ⅲ相試験(COMFORT-Ⅰ・Ⅱ試験)の併合解析の結果をご紹介します。
本併合解析では、骨髄線維症患者528例を対象に、ルキソリチニブの全生存期間に対する影響を検討しました。
また、解析にCOMFORT-ⅠおよびCOMFORT-Ⅱ試験の最終解析データを用い、事前に計画されていた本併合解析を行いました。
探索的評価項目の生存期間中央値は、ルキソリチニブ群が5.3年、対照群が3.8年であり、ルキソリチニブ群では対照群と比較して死亡リスクの減少が30%でした。
また、本邦における報告では高リスク、中間-Ⅱリスクの骨髄線維症患者の生存期間中央値は約2~4年*であるところ、本併合解析のサブグループ解析におけるルキソリチニブ群の生存期間中央値は高リスクで4.2年、中間-Ⅱリスクで未到達(推定8.5年)でした。
安全性
海外第Ⅲ相検証試験(COMFORT-Ⅰ・Ⅱ試験)の試験概要、主要評価項目の結果、安全性はご覧の通りです。
COMFORT-Ⅰ試験において、24週時に脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した被験者の割合は、ルキソリチニブ群41.9%、プラセボ群0.7%であり、プラセボ群と比較してルキソリチニブ群で有意に高い値を示しました(p<0.001、Fisherの正確検定)。
ルキソリチニブ群の血液学的有害事象は血小板減少症34.2%、貧血31.0%、ヘモグロビン減少14.2%等であり、主な非血液学的有害事象は、疲労25.2%、下痢23.2%、末梢性浮腫18.7%、呼吸困難17.4%等でした。
COMFORT-Ⅱ試験において、48週時に脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した被験者の割合は、ルキソリチニブ群28%、BAT群0%であり、BAT群と比較してルキソリチニブ群で有意に高い値を示しました(p<0.001、Cochran-Mantel-Haenszelの正確検定)。
ルキソリチニブ群の血液学的有害事象は血小板減少症44.5%、貧血41.1%等であり、主な非血液学的有害事象は、下痢23.3%、末梢性浮腫21.9%、無力症17.8%、呼吸困難15.8%、鼻咽頭炎15.8%等でした。
* Takenaka K et al. Int J Hematol 2017; 105: 59-69.