アフィニトール
NENの診断
NEN(神経内分泌腫瘍)の診断
NEN(神経内分泌腫瘍)は、腫瘍から過剰分泌されるホルモン由来の症状がみられる機能性NEN、ホルモン由来の症状のない非機能性NENに分けられます。
臨床診断
機能性NENはホルモン由来の症状を伴うため、その特徴を理解することで早期診断が可能です。しかし、鑑別すべき疾患が多く、初発症状の訴えから確定診断まで時間を要していることが問題点として認識されています。一方、非機能性NENは健康診断などの画像診断で偶然発見されることが多く、進行した状態で診断されることが少なくありません。
機能性NEN
機能性膵NENには、低血糖症状を現すインスリノーマ、腹痛や下痢を引き起こすガストリノーマ、糖尿病や皮膚炎を引き起こすグルカゴノーマ、大量の下痢や低カリウム血症を引き起こすVIPオーマなどがあり、それぞれ鑑別すべき疾患があります(表1)。
機能性消化管NENでみられるカルチノイド症候群は、下痢、皮膚紅潮、喘鳴、ペラグラ症状などが見られます(表1)。
非機能性NEN
非機能性NENには特異的な症状はありませんが、非機能性膵NENでは黄疸や膵炎、非機能性消化管NENでは腹痛・背部痛、便潜血・血便、便秘などを契機に診断されることがあります。
表1 機能性膵・消化管NENの症状と鑑別が必要な疾患・病態
主な症状・徴候 | 鑑別が必要な疾患・病態 | |
---|---|---|
インスリノーマ1,2) | 低血糖症状
|
インスリン自己免疫症候群、アルコール性肝障害、外因性インスリン飢餓(摂食障害)、胃術後、NIPHS |
ガストリノーマ (Zollinger-Ellison症候群)1,2) |
|
通常の消化性潰瘍、プロトンポンプインヒビター内服、萎縮性胃炎、慢性腎不全、G細胞過形成 |
グルカゴノーマ1,2) |
|
他の皮疹、糖尿病、栄養障害、慢性腎不全 |
VIPオーマ (WDHA症候群)1,2) |
|
感染性下痢症、緩下剤の過量使用、カルチノイド症候群 |
カルチノイド症候群1,3) |
|
膵外分泌機能不全、過敏性腸症候群 |
NIPHS: non-insulinoma pancreatogenous hypoglycemia syndrome, WDHA: watery diarrhea hypokalemia achlorhydria
1)Ito T, Jensen R. Expert Opin Pharmacother. 2021; 22: 685-693.
2)河本泉、今村正之. 日消誌. 2014; 111: 2263-2271.
3)Khan MS, et al. World J Gastroenterol. 2020; 26: 4537-4556.より作成
画像診断
画像診断は、鑑別診断及び腫瘍の正確な局在診断に必須であり、NENの治療方針を決定するうえできわめて重要な検査です。
鑑別診断では体外式超音波(US)、造影超音波内視鏡(CEUS)、CT、MRI等が用いられますが、画像所見のバリエーションは非常に多彩であるため、診断においては、通常型膵癌をはじめとする他の膵腫瘍との鑑別がしばしば問題になります。
局在診断のための画像検査は、CT、MRI、内視鏡検査、US、超音波内視鏡検査(EUS)、ソマトスタチン受容体シンチグラフィ(SRS)、選択的動脈内刺激薬注入法(SASI test)、PET/CTなどを組み合わせて行われます(表2)。また、転移検索にはUS、CT、MRI、FDG-PET/CT、SRSなどの検査が用いられます。
表2 膵・消化管NENの局在診断に用いる画像検査
局在診断 | |
---|---|
インスリノーマ |
|
ガストリノーマ |
|
その他の機能性腫瘍 |
|
MEN1/VHL |
|
非機能性膵NEN |
|
消化管NEN |
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NENの転移の検索 |
|
SASI: selective arterial secretagogue injection, US: ultrasonography, EUS: endoscopic ultrasonography, EUS-FNA: endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration, PET: positron emission tomography
膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン第2版作成委員会 編. 膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン 第2版, 日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS), 金原出版, 東京, 2019.より作成
病理診断
NENは、NET G1/G2、NEC、MiNENと分類され、それぞれ治療法や予後が異なるため、正確な病理診断が重要となります。
NENの分類は、WHO分類2019において分化度、細胞分裂数、Ki-67標識率によって行うことが推奨されています(詳細は「NEN(神経内分泌腫瘍)の病理組織診断」の項を参照)。
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